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書誌情報

Vol.53 No.2 February 2005

原著・基礎

インフルエンザ菌のペニシリン結合蛋白3変異とβ-ラクタム系薬のクラスタリング

三本木 祐美子1), 大崎 有美1), 前田 久美子1), 鈴木 貴久1), 片岡 裕史1), 井田 孝志1), 石川 みどり2), 生方 公子3)

1)明治製菓株式会社創薬研究部門, 2)同 薬品東京支店
3)北里大学生命科学研究所感染情報学

要旨

 インフルエンザ菌に対する各β-ラクタム系薬の抗菌力および耐性化の影響に関する特徴とその位置づけを明らかにすることを目的に,その耐性機序に基づいたβ-ラクタム系薬の抗菌プロファイルをクラスタリングの手法を用いて解析した。2000~2001年に分離された215株を,耐性に関与するpenicillin-binding protein(PBP)3にみられる5箇所のアミノ酸変異(377[Met→Ile],385[Ser→Thr],389[Leu→Phe],517[Arg→His],526[Asn→Lys])パターンにより6群に分類し,また,それぞれの菌株に対するMICをβ-ラクタム系薬:24薬剤について測定した。各群におけるMIC幾何平均値によるクラスター分析では,抗菌力の強さが主に反映され,比較的強い抗菌力を有するmeropenem,tazobactam/pipera-cillin,cefditoren(CDTR)等が同一のクラスターに分類された。また,各群における各薬剤のMIC上昇率によるクラスター分析では,おおむねカルバペネム系,ペニシリン系,セフェム系といった母核ごとに大きなクラスターに分類された。しかしながら,セフェム系薬は7位側鎖の構造の違いがクラスタリングに反映され,cefazolin,cefaclor,ceftazidimeは他の多くのセフェム系薬と異なるクラスターに分類された。また,CDTRは7位にaminothiazole基を有するにもかかわらず,やはり他とは異なるクラスターに分類され,それは本薬がPBP 3のアミノ酸変異の影響を受けにくい特性を有しているためと考えられた。今回試みた薬剤のクラスタリングはインフルエンザ菌に対する抗菌力の強さと耐性化の影響の両者が反映されており,さらにその薬剤の類似性を数値距離として示すことができた。

Key word

Haemophilus influenzae, penicillin-binding protein 3, β-lactam, clustering

別刷請求先

神奈川県横浜市港北区師岡町760

受付日

平成16年9月17日

受理日

平成17年1月5日

日化療会誌 53 (2): 121-127, 2005