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書誌情報

Vol.53 No.4 April 2005

原著・臨床

市中肺炎に対するpiperacillinの有効性と安全性

板橋 繁1), 渡辺 彰2), 賀来 満夫3), 武田 博明4), 新妻 一直5), 小沢 一浩6), 毛利 孝7), 五味 和俊8), 中井 祐之9), 阿部 達也10), 小野 玲子11), 麻生 昇12), 糸賀 寛13), 本間 光信14), 池田 英樹15), 井上 純人16), 齋藤 弘17), 塚本 東明18), 海瀬 俊治19), 前田 真作20), 鈴木 修三21), 数田 良宏22), 川島 辰男23)

1)塩竈市立病院呼吸器科
2)東北大学加齢医学研究所呼吸器腫瘍研究分野
3)東北大学大学院医学系研究科内科病態学講座感染制御・検査診断学分野
4)済生会山形済生病院内科, 5)福島県立会津総合病院内科
6)国立病院機構弘前病院内科, 7)岩手医科大学附属病院第三内科
8)済生会北上済生会病院呼吸器科, 9)厚生会仙台厚生病院呼吸器内科
10)東北厚生年金病院呼吸器科, 11)古川星陵病院内科
12)宮城県立循環器・呼吸器病センター呼吸器科, 13)秋田組合総合病院内科
14)市立秋田総合病院呼吸器内科, 15)三友堂病院内科・呼吸器科
16)山形県立新庄病院内科, 17)山形県立日本海病院内科
18)山形県立中央病院内科, 19)大原綜合病院内科
20)寿泉堂綜合病院呼吸器科, 21)福島県立医科大学附属病院第二内科
22)綜合病院福島赤十字病院内科, 23)東邦大学医学部付属佐倉病院内科

要旨

 Piperacillin(PIPC)はPRSPを含むStreptococcus pneumoniaeやBLNARを含むHaemophilus influenzaeに優れた抗菌力を有する。このことを臨床的に検証するため,S. pneumoniaeH. influenzaeが起炎菌と考えられる肺炎や慢性呼吸器疾患の二次感染に対するPIPCの臨床的有効性を検討した。
 今回の結果は,臨床効果が全体で98.4%の有効率を,またS. pneumoniaeおよびH. influenzaeの起炎菌別消長がそれぞれ92.9%,95.8%の消失率を示し,PIPCの有効性を示す結果であった。細菌学的効果は単数菌感染で96.9%(うち,S. pneumoniae 100%,H. influenzae 93.8%),複数菌感染で84.2%,全体で92.2%が陰性化していた。
 今回検出されたS. pneumoniaeH. influenzaeに対するPIPCのMICは,S. pneumoniaeではMIC rangeが≦0.06~4 μg/mL,MIC90が4 μg/mLであり,H. influenzaeではMICrangeが≦0.06~8 μg/mL,MIC90が0.25 μg/mLであった。PISP,PRSP,BLNARに対する抗菌力は,PISP+PRSPのMIC90が4 μg/mL,BLNARのMIC90が0.25 μg/mLであった。
 以上のことより,PIPCはPISP,PRSPを含むS. pneumoniaeとBLNARを含むH. influenzaeによる市中肺炎や慢性呼吸器疾患の二次感染に対して臨床的に有効な薬剤であることが示された。S. pneumoniaeH. influenzaeは市中肺炎や慢性呼吸器疾患の二次感染の起炎菌である確率が高く,この意味から考えるとPIPCは市中肺炎や慢性呼吸器疾患の二次感染のエンピリックセラピーに適した抗菌薬といえよう。

Key word

piperacillin, Streptococcus pneumoniae, BLNAR, community-acquired pneumonia, post-marketing surveillance

別刷請求先

宮城県塩竈市香津町7-1

受付日

平成16年12月17日

受理日

平成17年2月21日

日化療会誌 53 (4): 259-267, 2005