ページの先頭です
ホーム > バックナンバー > 目次 > 書誌情報
言語を選択(Language)
日本語(Japanese)English

書誌情報

Vol.53 No.6 June 2005

総説

キノロン系薬の作用機序と耐性機構研究の歴史

平井 敬二

杏林製薬株式会社創薬研究本部

要旨

 ニューキノロン薬の先駆けとなったノルフロキサシンが臨床現場で使用され始めて20年以上が経つが,その後も数多くのニューキノロン薬が開発されてきている。これらの新薬の開発と並行してキノロン薬の作用機序,耐性機構の研究も飛躍的に進歩してきた。本総説ではわれわれの研究内容も含め,キノロン薬の作用機序,耐性機構研究の約四半世紀の歴史を紹介する。
 (1)作用機序:標的酵素(DNAジャイレース,トポイソメラーゼIV)研究:われわれがキノロン研究を開始した1975年当時ではキノロン薬の詳細な作用メカニズムはまだ不明であったが,ノルフロキサシンを発見したのと同時期にキノロン薬がDNAジャイレースに作用することが報告された。その後DNAジャイレースの研究が進み,作用様式(キノロン・DNA・酵素の3者複合体),抗菌力との相関,耐性化機構(耐性決定領域での変異)などが明らかとなった。さらにDNAジャイレース以外に新たな標的酵素としてトポイソメラーゼIVが1990年に見出され,その研究からグラム陽性菌に対する抗菌力,高度耐性化との関連が明確となった。
 (2)膜透過性(排出機構)研究:ノルフロキサシンを用いた研究から,大腸菌をはじめとする腸内細菌では外膜のポーリンと呼ばれる透過孔を介してキノロン薬が菌体内に透過することを明らかにした。一方,緑膿菌におけるノルフロキサシン耐性機構の解析から膜透過性に関与するnfxBnfxCnalB変異遺伝子を見出したが,この耐性機構についてはその後多くの研究者により精力的な研究が行われ,キノロン薬に限らず緑膿菌の薬剤耐性に排出ポンプが大きく関与していることが明らかにされた。
 最近,プラスミド性のキノロン耐性(qnr遺伝子)が中国や米国で報告された。この発見は新たなキノロン耐性として今後の課題となりそうである。

Key word

drug-resistance, mode of action, DNA gyrase, efflux pump

別刷請求先

東京都千代田区神田駿河台2-5

受付日

平成17年2月4日

受理日

平成17年4月7日

日化療会誌 53 (6): 349-356, 2005