Vol.53 No.7 July 2005
原著・臨床
急性骨髄性白血病寛解導入療法中フルコナゾール投与によりQT延長を認めtorasades de pointesを呈した1例
東邦大学医学部付属大森病院血液・腫瘍科*
要旨
造血器腫瘍では抗癌薬による多剤併用療法が有効であるが,その主な毒性である骨髄抑制に対する支持療法は治療全体の中で重要な位置を占めている。今回われわれは急性骨髄性白血病の寛解導入療法後,使用していたfluconazole(FLCZ)の副作用と思われるQT延長を認めtorasades de pointesを呈した1例を経験したので報告する。症例は急性骨髄性白血病(FAB分類:M2)と診断された48歳の男性である。寛解導入療法を3クール施行後の骨髄抑制期に内因性敗血症を併発し,血液培養でCandidaが検出されたためFLCZ(400 mg/day)の投与が開始された。FLCZ投与開始7日後に突然の意識消失が出現し,モニター上で心室性頻拍(ventricular tachycardia;VT)を確認し胸骨叩打によって洞調律に回復したが,回復後の心電図上QTcは0.71と延長を認めた。原因として血清Caの低下およびFLCZ投与が考えられたため血清Ca値補正に努め,FLCZ投与を中止しAMPH-Bの投与に変更した。しかし翌日に再び意識消失が出現し,心電図上ではtorasades de pointesを呈していた。血清Ca値が補正されQT時間は正常化しVTは認めなくなったが,感染症の制御ができず死亡した。FLCZによるQT時間延長から生ずるtrosade de pointesに関しては文献的には1例報告があるのみであり認知度は低いが,QT時間延長を伴う不整脈を認めた場合はtrosade de pointesからVTへの警戒を怠らず血清Ca,Mgの検索とともに本薬剤の投与中止,代替薬への変更を速やかに行うことが必要であると考えられた。
Key word
fluconazole, torasades de pointes, acute myelogenous leukemia, QT-prolongation
別刷請求先
*東京都大田区大森西6-11-1
受付日
平成17年1月20日
受理日
平成17年5月17日
日化療会誌 53 (7): 412-416, 2005