Vol.53 No.8 August 2005
原著・基礎
ヒト唾液由来β-lactam系薬耐性嫌気性菌の検出
1)大阪歯科大学口腔外科学第1講座*
2)大阪歯科大学歯科保存学講座
3)太成学院大学人間学部
要旨
ヒト唾液中β-lactam薬耐性菌について検討した。成人男性12名より安静時唾液を採取し,ampicillin(ABPC),cefaclor(CCL)およびcefteram(CFTM)加寒天培地に塗抹した。嫌気培養にて発育したコロニーを薬剤選択菌とし,それらの菌種同定,β-lactamase産生性およびABPC,cefazolin(CEZ),CCL,CFTMのMICを測定した。ABPC選択菌39株,CCL選択菌45株およびCFTM選択菌46株のうち,β-lactamase産生菌はそれぞれ21,2および3株であった。ABPC選択菌としては通性嫌気性グラム陽性桿菌が最も多く,次いで偏性嫌気性グラム陰性桿菌であった。CCL選択菌では通性嫌気性グラム陽性球菌,通性嫌気性グラム陽性桿菌の順,CFTM選択菌では通性嫌気性グラム陽性桿菌,通性嫌気性グラム陽性球菌の順に多かった。ABPC選択菌とCFTM選択菌に対するMIC80は各薬剤で64~>256 μg/mL,CCL選択菌に対してはABPCで16 μg/mL,その他の薬剤で256 μg/mLであった。ABPCではβ-lactamase産生・penicillinおよびcephem系耐性菌が,CCLではβ-lactamase非産生・cephem系耐性菌が,CFTMではβ-lactamase非産生・penicillinとcephem系耐性菌がそれぞれ得られた。薬剤での選択で供試菌を採取する際には,使用薬剤により得られる菌種や耐性傾向および耐性機構が異なることを考慮すべきであることが示唆された。
Key word
oral bacterial flora, β-lactams, β-lactams resistance, antibiotic selected strain
別刷請求先
*大阪府枚方市楠葉花園町8-1
受付日
平成17年7月4日
受理日
平成17年7月27日
日化療会誌 53 (8): 471-475, 2005