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書誌情報

Vol.53 No.8 August 2005

原著・臨床

多剤耐性緑膿菌に対する抗菌薬の併用効果

岡 陽子

埼玉医科大学感染症科・感染制御科

要旨

 埼玉医科大学病院において,1999年1月から2002年6月までに臨床検体から分離されimipenem(IMP),amikacin(AMK),ciprofloxacin(CPFX)に対して耐性を示す薬剤耐性緑膿菌(multiple-drug resistant Pseudomonas aeruginosa: MDRP)57株を対象に各種抗菌薬の薬剤感受性,メタロβ-ラクタマーゼ産生,IMP-1型メタロβ-ラクタマーゼ遺伝子の有無を検討した。さらにPulsed field gelelectrophoresis(PFGE)による遺伝子多型を検討し,それぞれタイプの異なるMDRP25株を用いてchecker-board法による抗菌薬併用効果を検討した。また,薬剤耐性緑膿菌分離患者の患者背景や感染菌と判断された10例についてその臨床的な検討を行った。薬剤感受性測定の結果,IPMのMIC90は128 μg/mL,MIC rangeは8~512 μg/mL以上,AMKのMIC90は128 μg/mL,MIC rangeは32~512 μg/mL以上,CPFXのMIC90は64 μg/mL,MIC rangeは16~128 μg/mLであった。57株すべてにメタロβ-ラクタマーゼ産生とIMP-1型メタロβ-ラクタマーゼ遺伝子が確認された。PFGEによる遺伝子多型性は20種類に分かれ,内科系病棟と外科系病棟ではそれぞれ固有の遺伝子多型を示す株が多かった。遺伝多型の異なる25株の抗菌薬併用効果ではBIPM+GM,CPFX+AZT,CPFX+GMなどの組み合わせで相乗および相加効果を認める株が多く,中でもCPFX+AZTでは拮抗を認める株もなかった。感染症の原因菌と判断された10例の中で8例は尿路感染症であり,2例は敗血症であった。尿路感染症8例の予後は良好であったが,敗血症2例は死亡例であった。以上より薬剤耐性緑膿菌には有効な抗菌薬は少なく,抗菌薬の併用療法や発症を未然に防ぐための院内感染対策が重要と考えられた。

Key word

multiple-drug resistant Pseudomonas aeruginosa(MDRP), FIC index, IMP-1, PFGE

別刷請求先

埼玉県入間郡毛呂山町毛呂本郷38

受付日

平成17年6月24日

受理日

平成17年7月20日

日化療会誌 53 (8): 476-482, 2005