Vol.53 No.S-1 July 2005
原著・基礎
Doripenemのin vitro抗菌力
塩野義製薬株式会社創薬研究所*
要旨
新規カルバペネム系抗菌薬doripenem(DRPM)のin vitro抗菌活性について検討した。DRPMは好気性グラム陽性菌から陰性菌および嫌気性菌に対して幅広い抗菌スペクトルを示した。また各種細菌の2002年臨床分離株を用いた感受性試験において,DRPMは,Staphylococcus属のメチシリン感性株やStreptococcus属に対して≦0.016~1 μg/mLのMIC90を示し,腸内細菌科の各菌種やMoraxella catarrhalis,Haemophilus influenzaeに対しても0.031~1 μg/mLのMIC90を示し,優れた抗菌力を有していた。他のカルバペネム系抗菌薬の抗菌力と比較すると,おおむね好気性グラム陽性菌ではimipenem(IPM)やpanipenemに次ぐ優れた活性を有し,好気性グラム陰性菌ではmeropenem(MEPM)に次ぐ優れた活性を有していた。さらにPseudomonas aeruginosaに対するMIC50,MIC90はおのおの0.5,8 μg/mLであり,試験をした抗菌薬の中で最も強い抗P. aeruginosa活性を示した。こうしたDRPMの抗菌力は培地pHや接種菌量などの諸因子の影響を受けにくいことも示された。またStaphylococcus aureus,Escherichia coliに対するMBC測定やtime-kill studyから,抗菌力に伴った強い殺菌力を備えもつことも示された。DRPMは他のカルバペネム系抗菌薬と同様にmetallo-β-lactamaseにより加水分解を受けたが,基質拡張型β-lactamaseも含めてclass A,C,Dのβ-lactamaseに対して安定であった。DRPMの作用機序であるpenicillin-binding protein(PBP)への結合親和性を検討した結果,DRPMはMEPMと同様にS. aureusのPBP1,P. aeruginosaのPBP2,PBP3,E. coliのPBP2の活性を主に阻害することにより抗菌力を発揮しているものと考えられた。S. aureus,P. aeruginosaおよびE. coliの各株をDRPM,MEPMまたはIPM薬剤存在下で継代培養して得られた菌株では,いずれの薬剤に対してもMICの上昇がみられ,互いに交叉耐性を示した。
Key word
doripenem, antibacterial activity, penicillin-binding protein
別刷請求先
*大阪府豊中市二葉町3-1-1
受付日
平成17年2月1日
受理日
平成17年3月16日
日化療会誌 53 (S-1): 57-70, 2005