Vol.53 No.S-1 July 2005
原著・基礎
Doripenemのヒトdehydropeptidase-Iに対する安定性
塩野義製薬株式会社創薬研究所*
要旨
新規注射用カルバペネム系抗菌薬doripenemのヒト腎dehydropeptidase-I(DHP-I)に対する安定性を検討した。既存カルバペネム系抗菌薬であるimipenemはDHP-Iに不安定であるため,DHP-I阻害薬であるシラスタチンとの合剤として臨床で用いられており,カルバペネム系抗菌薬のヒトにおける体内動態を評価するうえでは,DHP-I安定性は重要な位置づけとされている。
本研究においては,COS-1細胞で高発現後,シラスタチンをカップリングしたアフィニティークロマトグラフィーによって精製したヒト腎由来DHP-I組換え蛋白を用いて,doripenemの分解活性を評価した。精製蛋白は,SDSポリアクリルアミド電気泳動によりほぼ単一のブロードなバンドを示したことから,糖蛋白として産生されていることが示唆された。
組換えヒト腎DHP-Iを用いた安定性試験において,imipenemは濃度に依存した速やかな分解が観察された。DHP-I存在下でimipenemを90分培養した時の残存活性が20%となるような条件下で,ヒトDHP-Iに対する安定性が高いことが報告され臨床では単剤で使用されているカルバペネム系抗菌薬meropenemは80%程度の高い残存活性を示した。新規カルバペネム系抗菌薬doripenemもmeropenemと同程度の高いDHP-I安定性を有することが示されたことから,ヒト体内において単剤で高い安定性を有することが示唆された。
Key word
doripenem, dehydropeptidase-I
別刷請求先
*大阪府豊中市二葉町3-1-1
受付日
平成17年1月24日
受理日
平成17年3月18日
日化療会誌 53 (S-1): 92-95, 2005