Vol.53 No.S-1 July 2005
臨床試験
Doripenemの前期第II相臨床試験
1)聖マリアンナ医科大学難病治療研究センター*
2)東邦大学医学部微生物学
3)東京慈恵会医科大学内科学(感染制御部)
4)琉球大学医学部第1内科
5)神戸大学医学部泌尿器科
6)東京都老人医療センター感染症科
要旨
新規注射用カルバペネム系抗菌薬doripenem(DRPM)の内科および泌尿器科領域における感染症患者を対象とした前期第II相試験を,全国41医療機関による多施設共同研究として実施し,本薬の有効性,安全性の検討を行うとともに,本薬の適応疾患と用法・用量の瀬踏み的評価を行った。
総症例数106例のうち,有効性評価は75例(内科:41例,泌尿器科:34例),安全性評価は106例(症状)および105例(臨床検査値),有用性評価は75例を解析対象とした。なお,評価の参考として喀痰中DRPM濃度(5例)を測定した。
DRPMの投与量は,125 mg×2回/日,250 mg×2回/日,250 mg×3回/日あるいは500 mg×2回/日の点滴静注(30~60分)とした。得られた成績は以下のとおりであった。
1.有効性の結果(評価対象75例)
(1)臨床効果(著効および有効):内科95.1%(39/41例),泌尿器科97.1%(33/34例),全体96.0%(72/75例)
(2)細菌学的効果(消失および菌交代):内科86.4%(19/22例),泌尿器科97.1%(33/34例),全体92.9%(52/56例)
2.安全性の結果
(1)副作用(症状:評価対象106例)は3例に3件(舌のしびれ感,頭痛,発疹)発現したが重篤なものはなく,いずれも投与終了後に消失した。
(2)副作用(臨床検査値:評価対象105例)は25例(45件)に発現し,その主なものはGPT上昇10.6%(11/104例),GOT上昇5.8%(6/104例),好酸球増多7.4%(7/95例)などであった。変動の程度はいずれも軽度であり,投与終了後に正常化または前値に復した。
(3)概括安全度(評価対象105例)の安全率は98.1%(103/105例)であった。
3.有用性の結果(評価対象75例)
・有用率:内科92.9%(39/42例),泌尿器科93.9%(31/33例),全体93.3%(70/75例)
慢性気道感染症と複雑性尿路感染症を対象に行った前期第II相臨床試験において,DRPMの有効性については非臨床の抗菌力から期待されたとおりの成績が得られ,安全性についても臨床上問題となるような副作用は認められず,本薬は感染症の治療において有用な薬剤であることが示唆された。
Key word
carbapenem, doripenem, respiratory tract infection, urinary tract infection, early phase II clinical study
別刷請求先
*神奈川県川崎市宮前区菅生2-16-1
受付日
平成17年1月11日
受理日
平成17年3月17日
日化療会誌 53 (S-1): 143-156, 2005