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書誌情報

Vol.53 No.S-1 July 2005

臨床試験

外科感染症におけるdoripenemの体内動態と臨床効果

谷村 弘1), 相川 直樹2), 炭山 嘉伸3), 横山 隆4)

1)和歌山労災病院
2)慶応大学医学部
3)東邦大学医学部付属大橋病院
4)広島大学医学部(現 安芸市民病院)

要旨

 幅広い抗菌力を有する新しいカルバペネム系抗菌薬doripenem(DRPM)について,その体内動態を検討するため胆嚢胆汁中・胆嚢組織内濃度測定試験(前期第II相試験)および腹腔内浸出液中濃度測定試験(第III相試験)を実施した。また,臨床効果を検討するために外科感染症患者を対象とした後期第II相および第III相試験を実施した。その結果,以下の成績を得た。
 1.体内動態
 胆嚢摘出手術予定患者10例にDRPM 250 mg 30分単回点滴静注した時,胆嚢胆汁中濃度は<0.16~15.4 μg/mL,胆嚢組織内濃度は<0.10~1.87 μg/gであった。
 開腹手術を施行した患者5例にDRPM 250 mg 30分単回点滴静注し,経時的に検体を採取した時の最高血漿中濃度は10.5~24.4 μg/mL,最高腹腔内浸出液中濃度は2.36~5.17 μg/mLであった。
 2.臨床効果と安全性
 後期第II相試験として,手術創感染22例,腹腔内膿瘍4例,腹膜炎7例,肝膿瘍4例,胆嚢炎6例,胆管炎5例に対して,DRPM 250 mg 1日2~3回または500 mg 1日2回を3~14日投与した結果,臨床効果は著効12例,有効31例,やや有効2例,無効3例で,有効率は89.6%(43/48例)であった。細菌学的効果における消失率は61.3%(19/31例)であった。副作用として症状の発現率は2.1%(1/48例),臨床検査値異常の発現率は15.2%(7/46例)であった。
 第III相試験として,腹腔内膿瘍7例,肝膿瘍2例,胆嚢炎6例にDRPM 250 mg 1日2~3回,または500 mg 1日2回を4~14日投与した結果,臨床効果は,著効2例,有効13例で,有効率は100%であった。細菌学的効果における消失率は54.5%(6/11例)であった。副作用としての症状は認めなかったが,臨床検査値異常は26.7%(4/15例)に認めた。
 以上の成績から,DRPMは1回250 mgを1日2~3回,または1回500 mgを1日2回投与することにより,外科感染症に対して有用な薬剤と考えられる。

Key word

doripenem, pharmacokinetics, tissue concentration, surgical site infection, clinical efficacy

別刷請求先

和歌山県和歌山市古屋435

受付日

平成17年1月11日

受理日

平成17年2月17日

日化療会誌 53 (S-1): 260-272, 2005