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書誌情報

Vol.53 No.S-1 July 2005

臨床試験

Doripenemの眼組織移行性と眼科領域感染症に対する臨床効果

大石 正夫1), 宮永 嘉隆2), 大野 重昭3), 藤原 隆明4), 佐々木 一之5), 塩田 洋6)

1)白根健生病院眼科
2)西葛西井上眼科病院
3)北海道大学医学部眼科
4)杏林大学医学部眼科
5)金沢医科大学眼科学教室
6)徳島大学医学部眼科

要旨

 新規注射用カルバペネム系抗菌薬doripenem(DRPM)250 mg点滴静脈内投与時の本薬の眼組織(前房水)への移行性を検討した。また,眼科領域感染症として角膜潰瘍,眼窩感染および眼内炎の患者へDRPM 250 mgを1日2回または3回,あるいは500 mgを1日2回点滴静脈内投与した時の本薬の有効性および安全性の検討を行った。
 1.組織移行性試験
 白内障手術施行患者へのDRPM点滴静脈内投与開始70~115分後の前房水中DRPM濃度は0.16~0.87 μg/mL,またほぼ同時期の血漿中の本薬の濃度は6.86~12.9 μg/mLであった。
 2.第III相一般臨床試験
 1) 有効性
 評価対象は15例(角膜潰瘍10例,眼窩感染4例,眼内炎1例)。1日投与量別の症例数は250 mg×2回投与が9例,250 mg×3回投与および500 mg×2回投与が,おのおの3例で,臨床効果における有効率は100.0%(15/15例)であった。
 投与前後で菌の消長が検討可能であった症例は8例(角膜潰瘍4例,眼窩感染3例,眼内炎1例)であった。これら8例の内訳はα-Streptococcus感染例が1例,Corynebacterium sp. 感染例が3例,Pseudomonas aeruginosa感染例が2例,Propionibacterium acnes感染例が1例およびStaphylococcus aureusPrevotella intermediaの混合感染例が1例であり,これら8例全例において原因菌はすべて消失した。また,投与後出現菌は認められなかった。
 2) 安全性
 評価対象は本薬を投与した全症例の15例で,主要評価項目として副作用(症状,臨床検査値)の有無を検討した。
 有害症状が4例(8件)に認められたが,軽度または中等度で,副作用(症状)と判定された症例はなかった。
 臨床検査値異常変動が5例(5件)に認められ,これらすべては治験薬との因果関係が否定されなかった。このため,副作用(臨床検査値)は,5例(5件:アラニンアミノトランスフェラーゼ上昇3件,アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ上昇,γ―グルタミルトランスペプチダーゼ上昇,各1件)となり,発現率は33.3%(5/15例)であった。程度はすべて軽度で,転帰はすべて正常化であった。なお,これらの副作用(臨床検査値)の多くは類薬での療法において認められている事象と同様の事象であった。

Key word

carbapenem, tissue concentration, corneal ulcer, orbital infection, endophthalmitis

別刷請求先

新潟県白根市大字上下諏訪木770-1

受付日

平成17年1月31日

受理日

平成17年3月3日

日化療会誌 53 (S-1): 313-322, 2005