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書誌情報

Vol.53 No.11 November 2005

総説

抗菌薬不応性発熱患者における抗真菌治療開始のタイミング

吉田 稔

帝京大学医学部附属溝口病院第4内科

要旨

 深在性真菌症は血液疾患や造血幹細胞移植時に合併するが,通常は確定診断が困難で,診断後にamphotericin B等による標的治療を行っても予後が不良であった。したがって好中球減少時の抗菌薬不応性発熱が3~4日以上持続する場合には抗真菌薬の経験的治療(empiric therapy; ET)が推奨されている。しかし実際にこのうちどの程度が真菌症かは明らかではなく,かなりの症例では不必要な抗真菌薬が投与されている可能性がある。近年診断法の進歩は著しく従来より早期に診断が可能となり,またアスペルギルスに抗菌力を有する種々の薬剤が開発されている。新規抗真菌薬はいずれも高価格であり,医療経済的にも従来のような経験的治療は現在,見直されるべき時期にある。近年注目されてきた治療戦略にpreemptive therapyあるいはpresumptive therapyがある。Preemptive therapyは感染のエビデンスはあるが,未だ疾病を発症していない状態で治療を開始する考え方である。Presumptive therapyは画像や血清診断など,何らかの真菌感染特異的なエビデンスがあり,疾患を発症している状態である。この場合は現在のETよりは若干治療開始は遅れるかもしれないが,真菌感染症が確定診断されてから治療するtargeted therapy(標的治療)よりは早期の治療となる。いずれも未だ確立したエビデンスは得られていないため,今後ETとの比較試験が必要であろう。その際には適切な検査計画と安全性を考慮した研究デザインが必要である。

Key word

antifungal therapy, empiric therapy, preemptive therapy, presumptive therapy

別刷請求先

神奈川県川崎市高津区溝口3-8-3

受付日

平成17年9月27日

受理日

平成17年10月7日

日化療会誌 53 (11): 673-678, 2005