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書誌情報

Vol.53 No.11 November 2005

原著・基礎

Estrogen receptor陽性ヒト乳癌株に対するS-1とtamoxifenの併用効果

山田 高也1), 頓宮 美樹2), 平久 治3), 橋本 麻子1), 鈴木 達夫1), 鈴木 幸男1), 厚田 幸一郎2,4), 浅沼 史樹5), 山田 好則5)

1)北里研究所病院研究部, 2)同 薬剤部
3)北里研究所実験動物管理センター
4)北里大学薬学部病院薬局部門
5)北里研究所病院外科

要旨

 エストロゲンレセプター(ER)陽性のヌードマウス可移植性ヒト乳癌株(MCF-7,R-27,Br-10)を用い,S-1とtamoxifen(TAM)の併用効果の検討を行った。初めに5-fluorouracil(5-FU),S-1,TAMの単剤での実験を最大耐容用量で行い,次いで併用効果を検討した。推定腫瘍重量が100~300 mgに達した時点で,5-FUは60 mg/kgを4日ごと計3回腹腔内投与,S-1は20 mg/kgを週5日計3週間経口投与,TAMは5 mg/kgを週6日計3週間経口投与して,実験期間中の薬剤投与群の対照群に対する相対腫瘍重量の比(T/C値)により薬剤の効果を比較した。5-FUのMCF-7,R-27およびBr-10に対するT/C値は,それぞれ68.6,80.4,52.7%であった。S-1の3株に対するT/C値は,49.0,60.0,29.6%であり,いずれも5-FUの場合よりも低値であった。一方,TAMの3株に対するT/C値は,それぞれ50.5,62.3,39.8%であった。次に,単剤での効果が最も小さかったR-27を用いて,併用実験を行ったところ,T/C値は5-FUとTAM併用群で51.9%,S-1とTAM併用群で28.7%であった。この併用効果に対する5-FUの代謝経路の関与を検討する目的で,R-27を用いてthymidylate synthase(TS)阻害率を検討したが,S-1単独群とS-1,TAM併用群間に差は認められなかった。同様に,dihydropyrimidine dehydrogenase(DPD)活性においても,両群間で差は認められなかった。さらに,腫瘍中およびRNA中の5-FU濃度の測定を行ったが,両群間で差は認められなかった。したがって,S-1とTAMの併用効果発現には,腫瘍中5-FU濃度の修飾とは,別の作用機序が関与しているものと考えられた。S-1とTAMの併用療法は,ホルモンレセプター陽性の進行再発乳癌に対する有用な治療方法であることが示唆された。

Key word

breast cancer, animal model, tamoxifen, combination therapy, S-1

別刷請求先

東京都港区白金5-9-1

受付日

平成17年7月13日

受理日

平成17年9月27日

日化療会誌 53 (11): 679-685, 2005