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書誌情報

Vol.53 No.S-3 December 2005

原著・基礎

Moxifloxacinのin vitroおよびin vivo抗菌力―Moxifloxacinの抗菌力―

西野 武志, 大槻 雅子

京都薬科大学微生物学教室

要旨

 新しいキノロン系抗菌薬moxifloxacin(MFLX)のin vitroおよびin vivo抗菌力を,ciprofloxacin(CPFX),sparfloxacin(SPFX),tosufloxacin(TFLX)およびlevofloxacin(LVFX)と比較して検討した。
 1.MFLXのMICはグラム陽性標準株に対して≦0.006~0.78 μg/mL,グラム陰性標準株に対して≦0.006~3.13 μg/mLであり,幅広い抗菌スペクトルを示した。
 2.MFLXの臨床分離株に対する抗菌力(MIC90)は,MethicillinあるいはLVFXに耐性を示すStaphylococcus epidermidisを除くグラム陽性菌において0.2~12.5 μg/mLと他薬剤と同等あるいはそれ以上であり,Enterobacter aerogenesProteus vulgarisMorganella morganiiおよびPseudomonas aeruginosaを除くグラム陰性菌においても,MIC90は0.012~25 μg/mLで,他薬剤とほぼ同等あるいはそれ以上の抗菌力を示した。LVFXに耐性を示すStaphylococcus aureusおよびS. epidermidisに対する感受性は,MIC90で12.5~50 μg/mLを示し,他薬剤と同様に低下したが,他薬剤より1~8倍優れた抗菌力を示した。
 3.MFLXの抗菌力は,培地の種類,血清添加および接種菌量による影響を受けなかったが,培地pHが酸性側で抗菌力の低下がみられた。
 4.S. aureusEscherichia coliおよびP. aeruginosaに対する増殖曲線に及ぼす影響では,MFLXのMIC以上の濃度で殺菌的に作用し,4MIC濃度1時間作用で,生菌数は1/10~1/1,000以下となった。また他薬剤でも薬剤濃度に対応した殺菌作用が認められた。
 5.薬剤作用時のS. aureusおよびE. coliの形態変化を微分干渉顕微鏡で観察したところ,S. aureusにおいては1/4 MIC濃度から菌体の膨化が,E. coliにおいては1/16 MIC濃度から菌体の著しい伸張が認められた。またMIC濃度以上では溶菌像も観察された。
 6.共焦点レーザー顕微鏡を用いて,S. aureusおよびE. coliの形態学的変化を検討した結果,1/4 MIC濃度のMFLXで処理したS. aureusにおいて,無核の娘細胞が観察され,またE. coliにおいて,細胞壁合成阻害薬であるpiperacillin(PIPC)では多核であったのに対して,1/2 MIC濃度のMFLXでは単核であった。
 7.マウス実験的全身感染症に対するMFLXの治療効果を検討したところ,グラム陰性菌では他薬剤より劣っていたが,グラム陽性菌ではSPFXと同等あるいはそれ以上であり,CPFXおよびLVFXより優れた効果を示した。
 8.マウス実験的呼吸器感染症に対するMFLXの治療効果を検討したところ,SPFXとほぼ同等であり,CPFXおよびLVFXより3~5倍以上の優れた治療効果を示した。

Key word

moxifloxacin, clinical isolate, antimicrobial activity, animal model

別刷請求先

京都府京都市山科区御陵中内町5

受付日

平成17年9月21日

受理日

平成17年11月24日

日化療会誌 53 (S-3): 1-15, 2005