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書誌情報

Vol.54 No.1 January 2006

原著・臨床

PK/PD解析に基づくarbekacinの至適投与法

小林 昌宏1), 斉京 明子2), 相馬 一亥3), 矢後 和夫1), 砂川 慶介4)

1)北里大学病院薬剤部
2)東京薬科大学薬学部
3)北里大学医学部救命救急医学
4)同 感染症学

要旨

 抗MRSA薬のarbekacin(ABK)について,至適投与法を大規模な症例で検証した報告は少ない。今回,われわれはMRSA肺炎患者におけるABKの単回投与法と複数回投与法の有用性を比較するとともに,pharmacokinetics(PK),pharmacodynamics(PD),およびPK/PDパラメータに基づいた至適投与法を検討した。対象は1998年4月~2005年3月にMRSA肺炎のためABKを1日200 mg投与された患者とし,診療録をレトロスペクティブに調査した。血中濃度は投与開始3~7日目の投与1 hr値を最高血中濃度(Cpeak),投与直前値を最低血中濃度(Ctrough)とした。エンドポイントは臨床的効果,細菌学的効果および腎機能障害発現の有無とした。解析可能患者は111例であった。χ2testによる投与法の比較では,単回投与法が優れている傾向が認められ,臨床的有効性については統計学的に有意であった(p=0.048)。多重ロジスティック回帰分析の結果,臨床的有効性としてCpeak[p=0.008,Odds ratio(OR)=1.27,95% Confidential Interval(95%CI)=1.06~1.57],細菌学的有効性としてCpeak/MIC[p=0.016,OR=1.22,95%CI=1.04~1.77],腎機能障害発現としてCtrough[p=0.002,OR=2.00,95%CI=1.32~3.34]および患者年齢[p=0.046, OR=1.06,95%CI=1.01~1.14]が有意な指標とされた。腎機能障害回避のためには加齢を加味した目標Ctroughの設定が必要であることが示された。また目標Cpeakの上限設定については再考が必要であった。

Key word

arbekacin, MRSA, optimal dosage, PK/PD analysis

別刷請求先

神奈川県相模原市北里1-15-1

受付日

平成17年9月29日

受理日

平成17年11月21日

日化療会誌 54 (1): 18-24, 2006