Vol.54 No.1 January 2006
臨床試験
高齢者における慢性呼吸器疾患の二次感染に対するgatifloxacin 1日200 mg投与の有用性の検討
長崎大学大学院医歯薬学総合研究科新興感染症病態制御学系
感染分子病態学講座病態生理制御学分野(第二内科)
要旨
ニューキノロン系抗菌薬gatifloxacin(GFLX)は,2002年6月に発売後,血糖値異常の副作用が報告され,2003年3月には糖尿病患者に禁忌となった。しかしながら,本薬剤の優れた抗菌力および喀痰・組織移行性からレスピラトリーキノロンとして日本呼吸器学会発刊(2003年)の「呼吸器感染症に関するガイドライン」成人気道感染症診療の基本的考え方にも推奨されている。また,肺炎球菌に対するGFLXのAUC/MICは200 mg×2回/日(400 mg/日)で74.4(29.0/0.39),100 mg×2回/日(200 mg/日)では35.9(14.0/0.39)および97.2(37.9/0.39:高齢者)である。これらの成績から,高齢者においては200 mg/日で治療可能と考えられた。
今回,慢性呼吸器疾患の二次感染を対象として,65歳以上の高齢者への200 mg/日投与が,非高齢者への400 mg/日投与と同等の有効性が認められるかどうかを比較検討した。
2004年11月から2005年3月までに長崎大学第二内科ならびに関連施設において,52例がエントリーされ,評価可能症例は32例であった。臨床効果は高齢者200 mg/日で87.0%(20/23例),非高齢者400 mg/日で88.9%(8/9例),全体で87.5%(28/32例)であった。原因菌の消長も考慮した最終評価判定でも,臨床効果と同等であった。また,安全性は有害事象が高齢者で1例,非高齢者で2例の計3例,臨床検査値異常が高齢者で2例,非高齢者で2例の計4例で,いずれも軽度であった。
高齢者慢性呼吸器疾患の二次感染に対して,GFLX 200 mg/日は,非高齢者400 mg/日と同等の有効性と安全性を有することが示唆された。
Key word
gatifloxacin, chronic respiratory tract infection, elderly patient or senior citizen
別刷請求先
*長崎県長崎市坂本1-7-1
受付日
平成17年10月11日
受理日
平成17年12月6日
日化療会誌 54 (1): 31-38, 2006