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書誌情報

Vol.54 No.3 May 2006

総説

性器ヘルペス再発抑制療法の現状と問題点―基礎の立場から―

白木 公康

富山大学医学部ウイルス学

要旨

 性器ヘルペスの抑制療法を考える際に重要なことは,「なぜ性器ヘルペスは再発するのか?」を理解することであると思われる。そこで,単純へルペスウイルス(HSV)の感染様式の特徴と再活性化に関して概説し,抗菌薬と対比して抗ヘルペス薬の特徴と耐性機序について概説する。
 HSVは皮膚・粘膜で感染して,感染部位の感覚神経終末から取り込まれて逆行性軸索輸送により脊髄後根神経節の感覚神経細胞にいたる。そこでHSVは神経節内で増殖・拡散し,感染した神経細胞の神経線維を下降・増殖し,皮膚・粘膜病変を形成する。したがって,初感染時に神経細胞には多数のHSVゲノムが残存・潜伏し,残存したHSVがその後の再発を起こす。最近,初感染時の神経節内HSV数が再活性化率を決定することが報告され,初感染時に充分に治療して潜伏するHSV数を減少させれば,再発を減少できる可能性が示された。このように,初感染時治療の重要性が明らかとなった。
 一方,頻回に再発を繰り返す性器ヘルペスに対しては,長期に抗ヘルペス薬を服薬する抑制療法が行われるため,耐性HSVの出現が懸念される。耐性株出現に関しては,抑制療法ではHSV量が限られ,通常の治療に比べ,抗ヘルペス薬の暴露される母集団が大きく桁が異なること,細胞内増殖様式が耐性を生じにくいこと,HIVやインフルエンザなどに比べHSVのDNA合成酵素のfidelityが高い(変異を生じにくい)ことなどにより,HSVは耐性が生じにくいという特徴がある。この点は,抗ヘルペス薬の特徴であり,適切に管理されている限り,耐性が問題となることは考えにくい。

Key word

herpes simplex virus, reactivation, recurrence, acyclovir, resistance

別刷請求先

富山県富山市杉谷2630

受付日

平成17年6月14日

受理日

平成18年3月20日

日化療会誌 54 (3): 217-220, 2006