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書誌情報

Vol.54 No.3 May 2006

総説

癌薬物療法の現状とその展望―造血器悪性腫瘍―

倉石 安庸, 名取 一彦

東邦大学医学部付属大森病院血液・腫瘍科

要旨

 造血器悪性腫瘍は白血病,悪性リンパ腫,多発性骨髄腫に大別され,白血病,悪性リンパ腫についてはさらに細分類されることになる。種々の病型で新たなる化学療法の展開がみられているが,特に注目すべき疾患としては慢性骨髄性白血病(chronic myelogenous leukemia;CML),急性前骨髄球性白血病(acute promyelocytic leukemia;APL),diffuse large B-cell lymphoma;DLBCL),多発性骨髄腫(multiple myeloma;MM)を挙げなければならないであろう。すなわち,CMLにおいてはその病因に深くかかわっているチロシンキナーゼに対する阻害薬により,本症に対する細胞遺伝学的有効率は飛躍的に向上し,長期的な予後の改善も期待され,同種造血幹細胞移植の適応についての議論にも影響を与えている。APLにおいては特有な染色体転座によって生じた融合遺伝子を標的とした薬剤である全トランス型レチノイン酸とアンスラサイクリン系抗白血病薬を中心とした化学療法との併用によりその治療成績が著しく向上している。DLBCLに関しては長らくCHOP療法療(cyclophosphamide,adriamycin,vincristine,prednisolone)が標準的治療であるとされてきたが,B細胞リンパ腫の95%以上に発現しているCD20に対するマウス/ヒトキメラ抗体であるrituximabをCHOP療法と併用することにより完全寛解率,無再発生存率,生存率でCHOP療法単独よりも優れていることが判明している。MMについては近年,自家造血幹細胞移植を併用した大量化学療法の導入,加えて特異な作用機序を示すサリドマイドやプロテアゾーム阻害薬の登場により新たな局面を迎えている。

Key word

hematological malignancy, chemotherapy, chronic myelogenous leukemia, diffuse large B-cell lymphoma

別刷請求先

東京都大田区大森西6-11-1

受付日

平成17年8月26日

受理日

平成18年4月3日

日化療会誌 54 (3): 221-226, 2006