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書誌情報

Vol.54 No.3 May 2006

総説

大腸癌の標準的薬物治療の成り立ちと現状について

田村 孝雄

神戸大学医学部附属病院消化器内科

要旨

 消化管癌の内科的治療の最近の進歩は目覚しく,進行大腸癌においても有効な薬剤が以前ではfluorouracil(5-FU)のみであったが,近年になってirinotecan(CPT-11,カンプトTM,トポテシンTM)やoxaliplatin(L-OHP,エルプラットTM)といった新しい有効な薬剤が開発され,ここ数年は第一選択とすべき治療法が毎年のように更新されている。そして現在の大腸癌に対する各レジメンの生存期間延長への寄与は5-FU/LV=irinotecan<IFL<FOLFOX=FOLFIRIの順になると考えられており,irinotecanやoxaliplatinと5-FUの併用レジメンであるFOLFIRIとFOLFOXの2つのレジメンが第一選択の標準とすべき治療とされる。さらにこれらのレジメンが開発される過程において,5-FUの持続点滴とbolus静注の違いや,5-FUとirinotecanの相互作用などいくつかの薬物動態に関する内容も明らかとなってきた。
 最近ではuracil/tegafur(UFTTM),S-1(TS-1TM),capecitabine(XelodaTM)などの経口制癌薬の開発も進み,FOLFOXやFOLFIRIのレジメンのなかに含まれる5-FUの持続点滴を,利便性の面からもこれらの経口薬で置き換える試みがなされつつある。加えてvascular endothelial growth factor(VEGF)やepidermal growth factor receptor(EGFR)などの働きを阻害するbevacizumab,cetuximabなどの分子標的治療薬もヒトでの使用が可能となり,それらも併用することで進行大腸癌の50%生存期間は2年に達しようとしている。
 化学療法を行わなかった場合の進行大腸癌の生存期間がおよそ3~6カ月という事実より考えて大腸癌に対する積極的薬物療法の意義が明らかになってきている。

Key word

colorectal cancer, chemotherapy, pharmacokinetics

別刷請求先

兵庫県神戸市中央区楠町7-5-1

受付日

平成17年8月29日

受理日

平成18年4月3日

日化療会誌 54 (3): 232-238, 2006