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書誌情報

Vol.54 No.3 May 2006

原著・基礎

Gardnerella vaginalisの薬剤感受性

村上 日奈子1), 松本 哲哉2), 岩田 守弘1), 安井 久美子1), 前原 千佳子1), 古谷 信彦1,3), 石井 良和3), 舘田 一博1,3), 山口 惠三1,3)

1)東邦大学医療センター大森病院臨床検査部
2)東京医科大学微生物学
3)東邦大学医学部微生物・感染症学

要旨

 Gardnerella vaginalisは細菌性膣症(bacterial vaginosis:BV)に関与する細菌の一つとされているが,本菌感染症の診断は一般的に細菌培養の結果をもとに判断されているわけではないため薬剤感受性に関する報告はまれである。そこで今回われわれは,2002年から2004年までの3年間に当院で分離されたG. vaginalis 607株について17薬剤を対象に微量液体希釈法により薬剤感受性を測定した。
 その結果,ペニシリン,カルバペネム,マクロライド,グリコペプチド系抗菌薬についてはいずれもMIC90が≦1 μg/mLを示し,全般的に良好な感受性を示した。ただし一部のセフェム系抗菌薬については,MIC≦1 μg/mLを示す株が全体の10%程度しか認められず,他の薬剤と比較するとセフェム系抗菌薬への低感受性が指摘される。
 今回検討対象とした3年間において経年的な薬剤感受性について検討した結果,明らかな感受性の変化は認めなかった。さらに今回のわれわれの結果と国内外で過去に報告された結果を比較検討したところ,MIC50,MIC90について報告間の顕著な差はみられなかった。これらの結果から総合的に判断して,本菌に関してはこれまでのところ抗菌薬に対する耐性化を裏づける確証は得られなかった。
 BVの診断はグラム染色などによっても可能であるため,必ずしも本菌の培養や薬剤感受性検査まで行わずとも,診断後は有効性が期待される抗菌薬の選択により治療が可能であると考えられた。

Key word

Gardnerella vaginalis, antimicrobial susceptibility

別刷請求先

東京都大田区大森西6-11-1

受付日

平成17年12月12日

受理日

平成18年3月3日

日化療会誌 54 (3): 249-254, 2006