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書誌情報

Vol.54 No.5 September 2006

原著・基礎

経口セフェム系抗菌薬S-1090のラット大腿部Staphylococcus aureus感染モデルに対する治療効果―ラット大腿筋組織内濃度との相関―

山野 佳則, 井澤 政明, 中村 理緒, 川井 悠唯, 竹間 盛夫

塩野義製薬株式会社創薬研究所

要旨

 経口セフェム系抗菌薬S-1090のラット大腿部Staphylococcus aureus感染モデルに対する治療効果と,大腿部筋肉内薬剤濃度との相関性を血清蛋白結合率の異なるcefcapene(CFPN),cefdinir,cefpodoximeおよびcefditorenを対照として検討した。
 薬剤静脈内投与後の血漿中濃度推移とマイクロダイアリシス法により測定した筋肉中の細胞外液遊離型薬剤濃度推移は,いずれの薬剤についても大きな乖離がみられた。一方,血清蛋白結合率をもとに算出した血漿中遊離型薬剤濃度と,筋肉中の遊離型薬剤濃度推移については,AUCの比は2倍以内とよく一致していた。
 S-1090あるいはCFPNがラット大腿部S. aureus感染モデルの筋肉内生菌数を1/100に減少させるために必要な投与量は4.73あるいは7.16 mg/kgであった。これらの投与用量における筋肉内遊離型薬剤濃度を基に算出した治療期間内におけるTime above MIC(T>MIC)は両薬剤とも23~33%とほぼ同一であった。
 以上の結果より,血清蛋白結合の高いS-1090の血漿中総濃度はCFPNに比し大きくなるものの,感染局所における遊離型濃度推移は血漿中遊離型濃度と同様に低く推移し,大腿部における遊離型濃度がT>MICとして23~33%となることが大腿部感染モデルに対する優れた治療効果が得られる理由であると考えられた。

Key word

S-1090, microdialysis, tissue concentration, time above MIC, thigh infection model

別刷請求先

大阪府豊中市二葉町3-1-1

受付日

平成18年2月22日

受理日

平成18年6月28日

日化療会誌 54 (5): 440-446, 2006