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書誌情報

Vol.54 No.S-1 October 2006

総説

Itraconazoleによる深在性真菌症の治療

河野 茂

長崎大学大学院医歯薬学総合研究科感染免疫学講座

要旨

 イトラコナゾールは,non-albicans Candidaを含めたカンジダ属やアスペルギルス属に対しても強い抗真菌活性を示すトリアゾール系抗真菌薬である。日本ではカプセル薬のみしか市販されていないが,hydroxypropyl-β-cyclodextrin(HP-β-CD)に可溶化させることで内用液と注射薬がようやく日本でも開発された。内用液はカプセル薬に比べ消化管からの吸収性が改善され,注射薬は2日間のLoading dose(400 mg分2/日)により,深在性真菌症の治療に必要な高い血漿中濃度を早期に安定して維持することが可能となった。
 海外では,すでにイトラコナゾールの内用液や注射薬による標的治療や経験的治療の臨床試験が実施され,優れた効果が報告されている。侵襲性アスペルギルス症に対する標的治療では,試験対象例にアムホテリシンB(AMPH)静注無効例が多く含まれていたが,イトラコナゾール静注後にカプセル薬を継続投与することにより,寛解率(寛解+部分寛解)は静注投与終了時に32%,試験終了時に48%と優れた効果を示した。また,好中球減少時の広域抗菌薬無効の持続発熱における経験的治療では,イトラコナゾール静注と内用液を継続使用することにより,AMPH静注と同程度の効果が得られ,腎毒性を含めた有害事象や治療脱落は有意に少ないと報告されている。
 日本では,すでにカプセル薬が1993年から発売されており,皮膚真菌症および内臓真菌症に広く臨床応用されている。今後,内用液や注射薬の使用可能になることで,イトラコナゾールは深在性真菌症の有用な選択肢の一つになると思われる。

Key word

itraconazole, fungal infection, aspergillosis, candidiasis

別刷請求先

長崎県長崎市坂本1-12-4

受付日

平成18年9月6日

受理日

平成18年10月2日

日化療会誌 54 (S-1): 1-5, 2006