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書誌情報

Vol.54 No.S-1 October 2006

原著・臨床

口腔カンジダ症に対するitraconazole内用液とカプセル薬による治療効果の比較

山口 英世1), 榎本 昭二2), 賀来 満夫3), 坂巻 壽4), 田中 廣一5), 吉田 稔6)

1)帝京大学医真菌研究センター
2)東京医科歯科大学
3)東北大学医学部附属病院中央検査部
4)東京都立駒込病院血液内科
5)医療法人社団清陽会御殿場高原病院感染症対策センター
6)帝京大学医学部附属溝口病院第4内科

要旨

 Itraconazole(ITCZ)は広域でしかも強力な抗真菌活性を有するアゾール系抗真菌薬である。ITCZ自体は脂溶性が高く,従来はカプセル薬(ITCZ-Cap)のみが製剤化されていたが,この製剤には経口投与後の吸収率が一定しないといった薬物動態上の難点があり,ITCZの臨床的有用性を制約していた。近年,この問題を克服するために,溶解補助薬のhydroxypropyl-β-cyclodextrin(HP-β-CD)添加により可溶化したITCZ内用液(ITCZ-OS)が開発された。この新製剤について,従来製剤のITCZ-Capとの間で臨床的有用性を比較検討するため,口腔咽頭カンジダ症の患者を2群に分け,一方にITCZ-OSを,他方にITCZ-Capをいずれも200 mg/日,1日1回,原則7日間経口投与するという治験デザインによる非盲検並行群間比較治験を全国39施設41診療科において実施した。なお,投与期間については,投与開始から8日目の時点で治癒(臨床症状スコア合計が0)には至らないものの投与前値からスコアが減少した例においては,さらに7日間の投与継続を可能とした。主要評価項目である投与8日目の著効率は,ITCZ-OS群で70.3%(52/74例)となり,ITCZ-Cap群での49.4%(42/85例)に比べて劣らないばかりか,むしろ高いことが示された。投与期間中の最終評価時の著効率は,ITCZ-OS群が78.4%(58/74例),ITCZ-Cap群が68.2%(58/85例)であった。ITCZ-OSは効果発現が早く,7日間の投与で70.3%の症例に著効を示したが,効果不十分とされた症例においても投与継続により,効果改善のさらなる向上が期待できることが示された。真菌学的効果の指標である菌陰性化率は,ITCZ-OS群およびITCZ-Cap群において,それぞれ投与8日目で71.6%(53/74例)と32.9%(28/85例),投与15日目では69.0%(20/29例)と43.2%(19/44例)となり,いずれの時点でもITCZ-OS群が有意に高い治療効果を示した(それぞれp<0.0001,p=0.006)。治験期間中に認められた副作用は両群ともに重度のものはなく,多くが軽度であり,いずれの症状も投与中あるいは投与終了後に消失または軽減した。ITCZ-OS群においてのみ溶解補助薬に起因すると思われる軽度の胃腸障害が認められた。
 以上の成績から,ITCZ-OSは200 mg/日,1日1回空腹時投与によって,口腔咽頭カンジダ症に対する優れた治療効果を投与早期から発揮する薬剤であることが確認され,したがって口腔咽頭カンジダ症の治療における臨床的有用性が示唆された。

Key word

itraconazole, oral solution, capsule formulation, oral candidiasis, hydroxypropyl-β-cyclodextrin

別刷請求先

東京都八王子市大塚359

受付日

平成18年6月1日

受理日

平成18年8月23日

日化療会誌 54 (S-1): 18-31, 2006