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書誌情報

Vol.55 No.1 January 2007

原著・臨床

Teicoplanin高用量投与の有用性と血中濃度

上田 康晴1), 野口 周作2), 牧 真彦1), 上笹 宙1), 望月 徹1), 畝本 恭子1), 黒川 顕1)

1)日本医科大学武蔵小杉病院救命救急センター
2)同 薬剤部

要旨

 救急領域におけるmethicillin-resistant Staphylococcus aureus(MRSA)感染症に対するteicoplanin(TEIC)の高用量投与(初日1,600 mg/日,以降800 mg/日)を実施し,本薬剤投与後の血中トラフ値推移と有効性および安全性との関係について検討し,下記の成績が得られた。
 (1)MRSAに起因する肺炎10例,創部感染症2例に対するTEICの臨床的有効率は,100%であった。
 (2)細菌学的効果は全症例のうち,消失9例,減少1例,菌交代2例,不変0例であった。TEIC単独治療8例では消失7例,減少0例,菌交代1例,不変0例で,他薬剤併用治療4例では消失2例,減少1例,菌交代1例,不変0例であった。なお全12例中4例にPseudomonas aeruginosaとの複数菌感染が認められた。
 (3)投与例では本薬剤に起因する副作用は認められなかった。
 (4)TEIC血中トラフ値は,day 2で17.5±6.7 μg/mL, day 4で16.3±6.3 μg/mLと若干低下するものの定常状態となり,day 8でも20.5±6.9 μg/mLとTEICの蓄積は軽微であった。さらに各症例で,血中濃度のばらつきも認めなかった。
 (5)TEICの高用量投与はその効果に抜群のキレがあり,しかも安全性の高いことが示され,重症MRSA感染症の治療において非常に有用な投与法であると考えられた。

Key word

MRSA, severe infection, teicoplanin, high dose administration, pharmacokinetics

別刷請求先

神奈川県川崎市中原区小杉町1-396

受付日

平成18年8月16日

受理日

平成18年11月22日

日化療会誌 55 (1): 8-16, 2007