Vol.55 No.1 January 2007
原著・臨床
小児におけるteicoplaninの母集団薬物動態解析
1)北里大学病院薬剤部*
2)北里大学医学部小児科学
3)北里大学医学部感染症学
要旨
乳児期から小児期におけるteicoplanin(TEIC)の母集団薬物動態を,非線形混合効果モデル(Nonlinear Mixed Effects Model:NONMEM)を用いて解析した。対象は,北里大学病院にてTEICが投与され,therapeutic drug monitoring(TDM)が実施された患児63例(28日齢~16歳)とした。母集団パラメータの算出は,クリアランス(CLTEIC),分布容積(VdTEIC)を薬物動態パラメータとし,1-コンパートメントモデルを適用した。個体間変動は指数誤差モデルを,残差変動は相対誤差モデルを使用した。TEIC薬物動態の解析には,年齢(Age),性別(Gender),体重(wt),血清クレアチニン値(Scr),血清アルブミン値(Alb)を共変量候補として検討した。測定された血漿中TEIC濃度(111ポイント)は,4.4~39.1 μg/mLであった。最終的に次の母集団薬物動態パラメータが得られた。
CLTEIC=0.00836×(wt/Scr)0.786 (L/hr)
VdTEIC=0.81×wt (L)
個体間変動は,CLTEIC;26.7%, VdTEIC;32.7%,残差変動は2.8 μg/mLであった。CLTEICは,腎重量の発育推移によく近似しており,小児期の腎機能の発育を反映していることが示唆された。モデルバリデーションの結果は良好であり,長期入院患児を中心とした小児のTEIC薬物動態評価に有用であると考えられた。
Key word
teicoplanin, population pharmacokinetics, NONMEM, child
別刷請求先
*神奈川県相模原市北里1-15-1
受付日
平成18年9月6日
受理日
平成18年11月17日
日化療会誌 55 (1): 17-22, 2007