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書誌情報

Vol.55 No.3 May 2007

原著・臨床

Pharmacokinetics/Pharmacodynamicsに基づくVancomycin投与設計の有用性

佐藤 正一, 斉藤 佳子

千葉県循環器病センター検査部検査科

要旨

 2003年4月から2006年3月までにmethicillin-resistant Staphylococcus aureus(MRSA)に塩酸バンコマイシン(Vancomycin: VCM)を投与した患者79例について解析を行った。Pharmacokinetics/Pharmacodynamics(PK/PD)理論では,VCMは抗菌薬の24時間暴露量と最小発育阻止濃度(MIC)の比(Area Under the blood concentration Curve/MIC: AUC24/MIC)が臨床効果に関係するといわれる。今回調査したMRSAのVCMに対するMIC分布をみてみると,VCM非投与群のMRSAのMICは1.0 μg/mLを中心とする分布であるのに対し,VCM投与群では2.0 μg/mLを示す株が42.9%(21/49)を占め,有意に高率であった(p<0.05)。またVCM投与例の感染部位は,VCMの移行性が悪い呼吸器が46.8%を占めていた。これらのことはPK/PD理論からみると治療に難渋する可能性を示す結果といえる。実際に治療の有効率についてみてみると薬物治療モニタリング(TDM)未実施例では,51.6%(16/31)であったのに対し,TDM実施例では75.0%(36/48)とその有用性は明らかであるが,PK/PD理論を用いて投与設計を行わない場合,35.4%(17/48)の症例で十分な血中濃度が得られず,治療成績が悪くなる可能性を示唆するものであった。以上のことから,VCMのTDMを実施する際にはPK/PD理論に基づいた投与設計を行うことが安全性を確保し,有効性を高めるために必須であると思われる。また,VCM治療成功例と不成功例の血清アルブミン値について解析した結果,治療不成功例では血清アルブミン値が治療成功例に比べ有意に低値であった(p<0.01)。治療成績向上のためには,抗菌薬による治療だけでなく,栄養サポートについても同時に行う必要があると思われる。

Key word

PK/PD, Vancomycin, MRSA, TDM, AUC/MIC

別刷請求先

千葉県市原市鶴舞575

受付日

平成18年10月3日

受理日

平成19年3月6日

日化療会誌 55 (3): 220-224, 2007