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書誌情報

Vol.55 No.3 May 2007

原著・臨床

固形癌治療後に発症した治療関連白血病/骨髄異形成症候群6例の経験

名取 一彦, 和泉 春香, 石原 晋, 長瀬 大輔, 藤本 吉紀, 加藤 元浩, 梅田 正法, 倉石 安庸

東邦大学医療センター大森病院血液・腫瘍科

要旨

 悪性腫瘍の治療後に発症する白血病(therapy-related leukemia; TRL),あるいは骨髄異形成症候群(therapy-related myelodysplastic syndrome; T-MDS)は悪性腫瘍の治療上重要な問題となっている。われわれは固形癌治療後に発症したTRL,T-MDSの6例(TRL: 3例,T-MDS: 3例)を経験したので報告する。6例のTRLおよびT-MDSに先行した病型は小細胞肺癌1例,非小細胞肺癌2例,腎癌2例,食道癌1例,胃癌1例,前立腺癌1例であり,うち2例は重複癌であった(小細胞肺癌+前立腺癌,食道癌+腎癌)。固形癌の治療については術後化学療法が施行された症例が3例,化学療法と放射線療法の併用療法が施行された症例が2例,手術療法単独症例が1例であった。骨髄液染色体検索で異常を認めた症例は4例であった。TRLとT-MDSの治療と予後についてはTRLでは2例に対しては併用化学療法が施行されたが,いずれも完全寛解(complete remission; CR)は得られなかった。しかし,FAB分類(French-American-British classification)によるM3症例ではall-trans retinoic acidによる分化誘導療法にてCRを得ることができた。T-MDSの3例に対しては化学療法は施行せず,支持療法のみが施行された。現在までにT-MDSの2例が生存中であり,4例は死亡し,死因は1例が固形癌(小細胞肺癌),3例がTRMあるいはT-MDSによるものであった。
 今後,悪性腫瘍の治療においてTRLあるいはT-MDSの発症を防げるようにするには本症の臨床的および生物学的病像をさらに解明していく必要があろう。

Key word

solid cancer, therapy-related leukemia, myelodysplastic syndrome

別刷請求先

東京都大田区大森西6-11-1

受付日

平成19年1月9日

受理日

平成19年3月8日

日化療会誌 55 (3): 225-229, 2007