Vol.55 No.4 July 2007
原著・臨床
小児の急性上気道感染症に対するcefdinir細粒およびcefcapene pivoxil細粒の服薬性,有効性および安全性
1)富士重工業健康保険組合総合太田病院小児科*
2)同 薬剤部
3)国立病院機構東京医療センター小児科
4)聖マリアンナ医科大学横浜市西部病院小児科
5)北里大学医学部感染症学
要旨
小児急性上気道感染症治療には経口セフェム系抗菌薬が選択されることが多い。今回,cefdinir(CFDN)細粒15 mg/kgあるいはcefcapene pivoxil(CFPN-PI)細粒9 mg/kgを1日3回に分割し,5日間経口投与した時の有効性,安全性および服薬性を検討した。CFPN-PI細粒は研究期間中に製剤が改良されたため,改良前後を2期に分け2004年1月から同年9月までを第1期,2004年10月から2006年4月までを第2期として評価を行った。第1期ではCFDN細粒群33例,CFPN-PI細粒群36例,第2期ではそれぞれ50例を対象とした。投与前後の体温推移および臨床症状の改善度から求めた有効率はCFDN細粒群(第1期:100%,第2期:91.8%),CFPN-PI細粒群(第1期:100%,第2期86.0%)であり,両被験薬群間に有意差を認めなかった。軟便・下痢の副作用の発現率はCFDN細粒群(第1期:12.1%,第2期:18.0%),CFPN-PI細粒群(第1期:13.8%,第2期:32.0%)であり,両被験薬群間に有意差を認めなかった。服薬性については,問題なく全部服用した症例はCFDN細粒群(第1期:80.8%,第2期82.9%),CFPN-PI細粒(第1期:57.1%,第2期66.7%)であり,CFPN-PI細粒の改良製剤は旧製剤に比して改善は認められたものの,CFDN細粒群が有意に優れた(p<0.05)。今回の研究で,小児急性上気道感染症に対してCFDN細粒およびCFPN-PI細粒はいずれも優れた有効性と安全性を示すことを確認した。特に服薬性を考慮する必要がある小児,特に低年齢層の患児に対しては,CFDN細粒は有用な選択薬であると考えられた。
Key word
cefdinir, cefcapene, upper respiratory tract infection, compliance
別刷請求先
*群馬県太田市八幡町29-5
受付日
平成19年3月16日
受理日
平成19年4月13日
日化療会誌 55 (4): 268-273, 2007