Vol.55 No.4 July 2007
短報
悪性腫瘍患者におけるアルベカシンの血中動態
1)ベルランド総合病院臨床検査室*
2)同 薬剤部
要旨
われわれは悪性腫瘍がアルベカシン(ABK)の薬物動態に与える影響をレトロスペクティブに検討した。非悪性腫瘍患者36例と悪性腫瘍患者20例(肺癌患者14名,その他の悪性腫瘍患者6名)を対象とし,one-compartment modelを用いてABKの薬物動態パラメータを算出した。
非悪性腫瘍患者群と悪性腫瘍患者群とではABKの薬物動態パラメータに有意な違いがみられなかった。悪性腫瘍患者を肺癌患者群とその他の悪性腫瘍患者群とで比較したところ,その他の悪性腫瘍患者群は非悪性腫瘍患者群とABKの薬物動態パラメータにおいて有意な違いはなかったが,肺癌患者においてはABKのクリアランスが有意に高くなった(それぞれ,0.0648±0.0355, 0.0828±0.0281 L/hr/kg〔平均値±標準偏差〕;P<0.05)。
肺癌患者において,ABKの薬物動態が変化する可能性が示唆された。
Key word
arbekacin, clearance, lung cancer, pharmacokinetic
別刷請求先
*大阪府堺市中区東山500-3
受付日
平成18年12月11日
受理日
平成19年3月23日
日化療会誌 55 (4): 274-277, 2007