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書誌情報

Vol.55 No.5 September 2007

原著・基礎

ピコリン酸によるマクロファージのMycobacterium avium殺菌能増強作用とアポトーシスとの関連性

多田納 豊, 清水 利朗, 安元 剛, 冨岡 治明

島根大学医学部微生物・免疫学

要旨

 ピコリン酸は,マクロファージ(MΦ)のMycobacterium aviumに対する抗菌活性を増強する作用を有しているが,マウスの骨髄由来MΦの場合では,ピコリン酸のMΦ殺菌能増強作用はMΦアポトーシス誘導作用に連動したものであることが報告されている。今回は,このようなメカニズムがヒトのMΦにもあてはまるものであるのか否かを知る目的で,THP-1ヒトMΦ(THP-1 MΦ)を供試して,ピコリン酸のMΦアポトーシス誘導能についてDNA laddering法とAnnexin V法を用いて検討した。その結果,Annexin V法による検討では,ピコリン酸処理によりTHP-1 MΦのAnnexin V反応性の増強,すなわちフォスファチジルセリンの細胞表面への移行という早期アポトーシスに特徴的な現象が誘導されることが明らかになった。他方,DNA laddering法による検討では,ピコリン酸処理により中・後期アポトーシスに特徴的なDNA分解・ヌクレオソームへの断片化が誘導されるような徴候は認められなかった。これらの成績は,ピコリン酸処理によりTHP-1 MΦに早期アポトーシスが誘導されるが,このピコリン酸の作用はcaspase-activated deoxyribonucleaseによるDNA断片化という中・後期のアポトーシス誘導にはつながらないことを示唆している。

Key word

picolinic acid, macrophage, apoptosis, bactericidal activity, Mycobacterium avium

別刷請求先

島根県出雲市塩冶町89-1

受付日

平成18年9月6日

受理日

平成19年5月29日

日化療会誌 55 (5): 358-362, 2007