Vol.55 No.S-1 October 2007
原著・臨床
細菌性肺炎を対象としたgarenoxacinの臨床第III相比較試験
1)杏林大学名誉教授*
2)東北大学加齢医学研究所呼吸腫瘍研究分野
(現 東北大学加齢医学研究所抗感染症薬開発研究部門)
3)新潟市社会事業協会信楽園病院内科
4)小田切呼吸器科クリニック
5)杏林大学医学部付属病院第一内科学
(現 杏林大学医学部感染症学)
6)川崎医科大学附属病院呼吸器内科
(現 昭和大学医学部臨床感染症学)
7)国立大学法人 長崎大学医学部・歯学部附属病院第二内科
(現 長崎大学大学院医歯薬学総合研究科感染免疫学講座先進感染制御学分野)
8)琉球大学医学部附属病院第一内科
(現 日本赤十字社長崎原爆諫早病院)
要旨
新規の経口デスフルオロキノロン系抗菌薬であるgarenoxacin mesilate hydrate(GRNX)の細菌性肺炎に対する有効性および安全性を検討する目的でlevofloxacin(LVFX)を対照薬として二重遮蔽比較試験を実施した。本試験は欧州および南米など(以下,外国)で実施した外国臨床成績の本邦試験への外挿可能性を判断することも目的とし,治験実施計画書をできる限り外国試験に合わせて実施し,投与終了時に加え投与終了7日後の有効性も評価した。
GRNXは400 mgを1日1回(GRNX群),LVFXは100 mgを1日3回(LVFX群)とし,いずれも10日間投与とした。有効性解析対象199例に対する投与終了時の有効率は,GRNX群99.1%(111/112例),LVFX群94.3%(82/87例)であり,GRNX群のLVFX群に対する非劣性が検証された。投与終了7日後の有効率は,GRNX群94.9%(94/99例),LVFX群92.8%(77/83例)であった。細菌学的効果評価対象99例における投与終了時の細菌学的効果(菌消失率)は,GRNX群(59/59例),LVFX群(40/40例)ともに100%であった。投与終了7日後における菌消失率は,GRNX群100%(50/50例),LVFX群86.8%(33/38例)とGRNX群はLVFX群に比較し有意に高値であった。安全性解析対象253例の副作用および臨床検査値異常発現率は,GRNX群35.6%(48/135例),LVFX群27.1%(32/118例),さらにこれら有害事象の種類およびその程度を含めともに両群間に有意差はみられなかった。
外国でのGRNXの試験成績との比較において,その主要評価項目である投与終了7日後の有効率は,本邦での94.9%(94/99例)に対し,外国での成績は89.9%(89/99例)であり類似していた。また,副作用の発現率は15.6%であり外国成績での19.8%と類似しており,その種類,程度においても偏った事象はみられなかった。
以上よりGRNX 400 mg 1日1回10日間投与は,細菌性肺炎の治療に対し,高い臨床的有用性が期待できるとともに外国成績の本邦試験への外挿可能性も考えられた。
Key word
garenoxacin, pneumonia, double blind study, levofloxacin
別刷請求先
*東京都三鷹市新川6-20-2
受付日
平成19年6月8日
受理日
平成19年7月18日
日化療会誌 55 (S-1): 127-143, 2007