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書誌情報

Vol.55 No.S-1 October 2007

原著・臨床

多剤耐性肺炎球菌による呼吸器感染症および耳鼻咽喉科領域感染症に対するgarenoxacinの臨床効果

河野 茂1), 小林 宏行2), 馬場 駿吉3), 高畑 正裕4)

1)長崎大学大学院医歯薬学総合研究科感染免疫学講座先進感染制御学分野
2)杏林大学名誉教授
3)名古屋市立大学名誉教授
4)富山化学工業株式会社綜合研究所

要旨

 新規な経口デスフルオロキノロン系抗菌薬であるgarenoxacin mesilate hydrate(GRNX)の呼吸器感染症および耳鼻咽喉科領域感染症を対象とした臨床試験(8試験)から,Streptococcus pneumoniaeを原因菌とする症例を対象として,原因菌の各種抗菌薬に対する感受性を測定し,多剤耐性肺炎球菌の同定,penicillin binding protein(PBP)遺伝子変異およびマクロライド耐性遺伝子の解析を行い,S. pneumoniaeの耐性別に臨床効果を検討した。GRNXが投与された症例から原因菌として130株のS. pneumoniaeが分離され,このうちpenicillin-resistant S. pneumoniae(PRSP)が20.8%(27/130株)およびpenicillin-intermediate resistant S. pneumoniae(PISP)が26.2%(34/130株)と判定された。各種抗菌薬に対する耐性度を検討するために,106株について再度感受性を測定した。S. pneumoniaeに対する各種抗菌薬のMIC90は,GRNX 0.125 μg/mL,levofloxacin 2 μg/mL,gatifloxacin 0.5 μg/mL,moxifloxacin 0.25 μg/mL,cefuroxime 8 μg/mL,erythromycin>128 μg/mL,azithromycin>128 μg/mL,telithromycin 0.25 μg/mL,tetracycline 64 μg/mLおよびsulfamethoxazole-trimethoprim(ST)2 μg/mLであり,GRNXは測定した薬剤のなかで最も強い抗菌活性を示した。各抗菌薬に対する耐性菌の頻度はキノロン耐性2.8%(3/106株),β-ラクタム耐性44.3%(47/106株),マクロライド耐性79.2%(84/106株),テトラサイクリン耐性80.2%(85/106株)およびST耐性9.4%(10/106株)であり,2薬剤以上の多剤耐性菌は78.3%(83/106株)であった。GRNXの投与の有無にかかわらず,臨床試験から分離されたすべてのPRSPおよびPISP 72株におけるPBP遺伝子変異ではpbp1a+pbp2x+pbp2b変異が39株と最も多く,マクロライド耐性遺伝子ではermBが33株と最も多く占めていた。GRNXは,肺炎球菌感染症全体に対する臨床的有効率は96.2%(102/106例)であったが,多剤耐性肺炎球菌に対する有効率が96.4%(80/83例),菌消失率が100%(81/81株)と高い臨床効果であった。

Key word

garenoxacin, des-fluoro(6)-quinolone, multidrug-resistant Streptococcus pneumoniae

別刷請求先

長崎県長崎市坂本1-7-1

受付日

平成19年6月13日

受理日

平成19年7月26日

日化療会誌 55 (S-1): 222-230, 2007