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書誌情報

Vol.56 No.2 March 2008

原著・基礎

臨床分離Candida tropicalisにみられたmicafunginのparadoxical effect

中井 徹1), 松本 哲1), 池田 文昭1), 三鴨 廣繁2)

1)アステラス製薬株式会社薬理研究所
2)岐阜大学大学院連合創薬医療情報研究科感染症治療学

要旨

 岐阜大学病院においてmicafungin(MCFG)投与中の患者血液より分離されたCandida tropicalisが,通常の感受性レベルより高濃度のMCFG存在下に発育した。MCFG耐性化の懸念があったため,感染防御効果をはじめとする基礎検討により本菌株のプロファイリングを行った。CLSIのM27-A2に準拠したミクロ液体希釈法で測定した本菌株のMCFG感受性は,培養24時間における判定ではMIC 0.0625 μg/mLと良好であった。培養48時間になると,8~32 μg/mLの濃度域にごく微少な発育を肉眼的に認めた。発育した菌体を光学顕微鏡下に観察すると,ブドウの房様の菌塊状を呈しており,分散した酵母状を呈する薬剤無処理菌体の形態とは大きく異なっていた。Antibiotic medium 3を感受性測定用培地として用いると,高濃度における発育はみられず,MIC以上の濃度で殺菌的な効果が認められた。また,cyclophosphamide処理して好中球を減少させた雄性ICR系マウスに,本菌株の致死菌量を尾静脈内接種して作成した播種性感染モデルに対するED50値は0.29 mg/kg(95%信頼区間0.18~0.41 mg/kg)であり,比較対照とした通常感受性株の0.35 mg/kg(同0.26~0.48 mg/kg)と同等であった。以上のプロファイルから,本菌株は通常感受性株と比較してやや浸透圧抵抗性が増大したことによりparadoxical effectを示すが,MCFGのin vivo効果には影響がなかったことからMCFG感受性と判断して差し支えないと考えられた。

Key word

micafungin, Candida tropicalis, paradoxical effect

別刷請求先

大阪府大阪市淀川区加島2-1-6

受付日

平成19年5月15日

受理日

平成19年11月28日

日化療会誌 56 (2): 185-189, 2008