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書誌情報

Vol.56 No.2 March 2008

短報

Linezolid使用例の臨床的背景とその臨床効果

加藤 哲朗1), 佐藤 文哉1), 堀野 哲也1), 中澤 靖1), 坂本 光男1), 吉田 正樹1), 小野寺 昭一1), 清田 浩2)

1)東京慈恵会医科大学感染制御部
2)同 泌尿器科

要旨

 東京慈恵会医科大学附属病院におけるlinezolid(LZD)使用例の臨床的背景とその臨床効果について検討した。
 2006年7月から2007年8月までの13カ月間にLZDを投与した15例を対象とした。その年齢は0~80歳(中央値66歳)で,抗菌薬投与対象主疾患としては重複も含めて敗血症4例,化膿性関節炎4例,肺炎2例,感染性心内膜炎2例,骨髄炎2例,深在性皮膚軟部組織感染症2例,縦隔炎1例,髄膜炎1例であった。起炎菌はmethicillin-resistant Staphylococcus aureus(MRSA)11株,methicillin-resistant Staphylococcus epidermidis(MRSE)3株,methicillin-sensitive Staphylococcus aureus(MSSA)1株であった。LZDを使用した理由(重複)は前治療が無効であったものが10例,腎機能障害によるものが5例,前治療の副作用により薬剤の変更を必要としたものが4例であった。LZDの臨床的効果は有効13例,無効1例,判定不能1例であった。LZDにより軽度の貧血を4例に,血小板減少症を3例に,そして肝機能障害を1例(投与中止)に認めたが,これらはいずれも保存的治療にて改善した。
 LZDは薬剤耐性グラム陽性菌感染症において既存薬剤が無効あるいは不耐の状況でも有効であり,副作用も認容できるものであった。しかし,LZDの乱用や不要な状況下での安易な使用によりLZD耐性菌の増加が懸念されることから,その使用にあたっては症例ごとに厳密な検討を行い適正に使用されるべきである。

Key word

linezolid, MRSA

別刷請求先

東京都港区西新橋3-25-8

受付日

平成19年11月1日

受理日

平成19年12月14日

日化療会誌 56 (2): 202-205, 2008