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書誌情報

Vol.56 No.S-1 April 2008

原著・臨床

呼吸器感染症に対するsitafloxacinの一般臨床試験

斎藤 厚1), 谷川原 祐介2), 渡辺 彰3), 青木 信樹4), 二木 芳人5), 河野 茂6), 賀来 満夫7), 堀 誠治8), 戸塚 恭一9)

1)日本赤十字社長崎原爆諫早病院
2)慶應義塾大学医学部薬剤部
3)東北大学加齢医学研究所抗感染症薬開発研究部門
4)新潟市社会事業協会信楽園病院内科
5)昭和大学医学部臨床感染症学講座
6)長崎大学大学院医歯薬学総合研究科感染免疫学講座(第二内科)
7)東北大学大学院医学系研究科内科病態学講座感染制御・検査診断学分野
8)東京慈恵会医科大学薬理学講座
9)東京女子医科大学感染対策部感染症科

要旨

 ニューキノロン系抗菌薬sitafloxacin(STFX;DU-6859a)は,幅広い抗菌スペクトルを有し,呼吸器感染症の主要原因菌であるStreptococcus pneumoniaeに対しても強い抗菌力を有する。呼吸器感染症に対するSTFXの有効性と安全性を評価するとともに,本薬の臨床推奨用量と考えられる1回50 mg 1日2回の妥当性を,1回100 mg 1日2回投与を含む臨床試験にてpharmacokinetics-pharmacodynamics(PK/PD)の観点より検討した。
 有効率は,50 mg×2/日投与で92.3%(96/104),100 mg×2/日投与で93.1%(27/29)であった。陰性化率は,50 mg×2/日投与で89.1%(57/64),100 mg×2/日投与で82.4%(14/17)であった。主な原因菌の消失率は,S. pneumoniae 91.7%(22/24),Haemophilus influenzae 100%(24/24)であった。
 ベイズ推定により算出した呼吸器感染症患者のCmaxおよびAUC0-24hは,50 mg×2/日投与でそれぞれ0.57±0.21 μg/mLおよび9.38±4.24 μg・h/mL,100 mg×2/日投与でそれぞれ1.17±0.45 μg/mLおよび17.16±6.52 μg・h/mLであった。Cmax/MICが5以下またはAUC0-24h/MICが100以下の場合は原因菌の消失率はそれぞれ33.3%(3/9)または40.0%(4/10)と低かったが,Cmax/MICが5を超える場合は96.3%(79/82),AUC0-24h/MICが100を超える場合は96.3%(78/81)の消失率が得られた。また,本試験で得られた全原因菌に対するSTFXのMIC90は0.1 μg/mLであり,呼吸器感染症の原因菌の9割に対しては50 mg×2/日投与でCmax/MIC 5およびAUC0-24h/MIC 100をほぼ満たすと考えられた。
 副作用発現率は,50 mg×2/日投与で43.5%(50/115),100 mg×2/日投与で42.4%(14/33)であった。主な副作用は下痢または軟便であり,その発現率は13.5%(20/148)であった。下痢または軟便の発現被験者のCmaxおよびAUC0-24hは,非発現被験者に比べ高い傾向が認められた。また,重度と判定された副作用は認められなかった。
 以上の成績より,呼吸器感染症に対するSTFXの用法・用量は1回50 mg 1日2回が適切であると判断した。

Key word

respiratory tract infection, PK/PD, sitafloxacin, fluoroquinolone

別刷請求先

長崎県諫早市多良見町化屋986-2

受付日

平成19年12月28日

受理日

平成20年2月8日

日化療会誌 56 (S-1): 63-80, 2008