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書誌情報

Vol.56 No.3 May 2008

原著・臨床

MRSA感染症患者に対するarbekacin 200 mg 1日1回投与の治療効果―臨床薬理試験―

相川 直樹1), 河野 茂2), 賀来 満夫3), 渡辺 彰4), 山口 惠三5), 谷川原 祐介6)

1)慶應義塾大学医学部救急医学
2)長崎大学大学院医歯薬学総合研究科感染免疫学講座先進感染制御学分野
3)東北大学大学院医学系研究科内科病態学講座感染制御・検査診断学分野
4)東北大学加齢医学研究所抗感染症薬開発研究部門
5)東邦大学医学部微生物・感染症学教室
6)慶應義塾大学医学部薬剤部

要旨

 methicillin-resistant Staphylococcus aureus(MRSA)感染症患者に対するarbekacin(ABK)の200 mg 1日1回投与法の有効性,安全性,血中ABK濃度との関係(PK/PD)を検討するため,多施設共同一般臨床試験を実施した。ABK投与19例のうち14例を有効性解析対象とした。14例はすべて肺炎症例であった。また,全19例を安全性解析対象とした。MRSA肺炎に対する臨床効果(有効率)は71.4%,細菌学的効果(消失・減少率)は46.2%と良好な成績であり,200 mg 1日1回投与法はMRSA肺炎に対して有効であることを確認した。薬物動態パラメータに関しては,Cmaxおよびトラフ値の平均値はそれぞれ16.2 μg/mL,1.1 μg/mLであり,中等度以上の腎機能低下により半減期は延長した。PK/PD解析の結果,Cmax/MICが7~8を上回る場合には期待する臨床効果が得られるものと推察されたが,症例数が少なくターゲット値を明確にすることは困難であった。安全性に関しては,副作用発現率は自他覚所見で15.8%,臨床検査値異常変動では36.8%であり,未知の副作用は認められなかった。重篤な有害事象としてショックが1例に認められたが,ABKとの因果関係は否定された。安全性上の目安とされている血中濃度と副作用発現との関連は,Cmaxが12 μg/mL以上の患者では12 μg/mL未満の患者と比べて副作用発現頻度が高まることはなく,トラフ濃度2 μg/mLと副作用発現頻度との関係も同様であった。以上,ABKの200 mg 1日1回投与法によって高いCmaxが得られ,優れた有効性が認められた。また,多くの患者でトラフ濃度は2 μg/mL未満に低くコントロールされ,副作用発現頻度が高まることはなかった。これらの結果より,ABK 200 mg 1日1回投与法の有用性を確認できた。

Key word

arbekacin, once a day, MRSA, PK/PD

別刷請求先

東京都新宿区信濃町35

受付日

平成20年2月13日

受理日

平成20年3月14日

日化療会誌 56 (3): 299-312, 2008