Vol.56 No.5 September 2008
原著・臨床
急性咽喉頭炎,急性扁桃炎および急性鼻副鼻腔炎に対するazithromycin単回投与製剤の多施設共同,非盲検非対照試験
和歌山県立医科大学耳鼻咽喉科・頭頸部外科*
要旨
マクロライド系抗菌薬であるazithromycin(AZM)の新剤型,経口懸濁液用の徐放性製剤(単回投与製剤)の急性咽喉頭炎,急性扁桃炎および急性鼻副鼻腔炎患者を対象とした第3相,多施設共同,非盲検非対照試験を実施し,AZM単回投与製剤2 g単回経口投与時の有効性および安全性を検討した。
主要評価項目である臨床効果解析対象集団の第8日目の臨床効果(有効率)は,全体で88.5%(77/87例)であり,疾患別では急性咽喉頭炎97.1%(34/35例),急性扁桃炎94.4%(17/18例)および急性鼻副鼻腔炎76.5%(26/34例)であった。急性鼻副鼻腔炎では,投与後の日数経過に伴い有効率が第15日目91.2%,第29日目100%と上昇した。
細菌学的効果解析対象集団の第8日目の細菌学的効果(菌消失率)は,全体で78.1%(25/32例),疾患別では急性咽喉頭炎92.3%(12/13例),急性扁桃炎66.7%(4/6例),急性鼻副鼻腔炎69.2%(9/13例)であった。急性鼻副鼻腔炎では,投与後の日数経過に伴い菌消失率が上昇し,第15日目に100%(13/13例)となった。
安全性について,因果関係を否定できない有害事象の発現率は54.5%(54/99例)であり,主な有害事象は下痢,腹痛であったが,いずれの有害事象も回復が確認された。重度および重篤な有害事象,死亡例および治験中止にいたった有害事象は認められなかった。
以上の成績から,AZM単回投与製剤は,耳鼻咽喉科領域感染症(急性咽喉頭炎,急性扁桃炎および急性鼻副鼻腔炎)に対して2 g単回経口投与により,優れた臨床効果および良好な忍容性を示し,実際の臨床現場では,服薬コンプライアンスを含め,有用性の高い抗菌薬と考えられた。
Key word
azithromycin, single-dose, extended release, acute tonsillitis, acute rhinosinusitis
別刷請求先
*和歌山県和歌山市紀三井寺811-1
受付日
平成20年3月28日
受理日
平成20年6月2日
日化療会誌 56 (5): 525-537, 2008