Vol.56 No.6 November 2008
症例報告
Vincristineとitraconazoleにより重篤な薬物相互作用を来した急性リンパ性白血病の1例
東邦大学医療センター大森病院血液・腫瘍科*
要旨
vincristine(VCR)とitraconazole(ITCZ)の相互作用と思われる有害事象を来した急性リンパ性白血病(ALL)を経験した。症例は51歳男性,腰背部痛を主訴に受診。精査の結果ALLと診断され,VCRを含む多剤併用療法と真菌感染予防としてITCZの内服を開始。開始後肝障害に加え,便秘,痺れや低Na血症等,VCRによると思われる有害事象を認めた。ITCZを中止,水分制限,Na補充などで改善を得た。以降ITCZをfluconazoleへ変更,有害事象は認めず化学療法を継続している。ビンカアルカロイド系抗悪性腫瘍薬はcytochrome P450の一つであるCYP3A4で代謝されるが,アゾール系抗真菌薬はCYP3A4阻害薬として知られており,特にITCZはCYP3A4を強力に阻害するとされる。本症例はこれらの相互作用によりVCRの代謝が遷延,有害事象が重篤化したと考えられた。
Key word
vincristine, itraconazole, cytochrome P450, syndrome of inappropriate secretion of antidiuretic hormone(SIADH), acute lymphocytic leukemia
別刷請求先
*東京都大田区大森西6-11-1
受付日
平成20年4月3日
受理日
平成20年6月16日
日化療会誌 56 (6): 634-637, 2008