Vol.57 No.1 January 2009
原著・基礎
In vitro血中濃度シミュレーションモデルを用いたStreptococcus pneumoniaeおよびEscherichia coli耐性化防止のためのlevofloxacinの至適投与法の検討
1)第一三共株式会社生物医学第四研究所*
2)同 プロジェクト推進部
3)東京慈恵会医科大学薬理学
4)東京女子医科大学感染対策部感染症科
要旨
Levofloxacin(LVFX)の用法・用量を耐性化抑制の観点から検討する目的で,in vitroシミュレーションモデルを用いて本薬のヒトにおける血中濃度を再現し,Streptococcus pneumoniaeおよびEscherichia coliに対する殺菌効果および抗菌薬作用後の耐性菌出現の有無を検討した。さらに,キノロン系抗菌薬の治療効果および耐性化抑制に相関するPK/PDパラメータであるAUC/MICおよびCmax/MICを用いた解析を実施した。LVFX感受性菌(MIC≤2 μg/mL)を対象に検討した結果,S. pneumoniaeではAUC/MIC≥35.8およびCmax/MIC≥5.45の場合に,E. coliではAUC/MIC≥47.3およびCmax/MIC≥5.6の場合に高い殺菌効果およびLVFXの感受性低下ポピュレーションの出現が抑制された。すなわち,現在の海外通常用量である1日500 mg単回経口投与(q.d.)の血中濃度推移では,LVFX耐性菌の出現が抑制された。一方,国内における通常用量である100 mg 1日3回投与(t.i.d.),海外の尿路感染症における通常用量である250 mg q.d.,および250 mg 1日2回投与(b.i.d.)ではMICが1~2 μg/mLの一部の菌株でCmax/MICのターゲット値を確保できず,抗菌薬作用後にLVFXに対する感受性が1/8~1/2に低下した菌のポピュレーションが出現した。これらの耐性機作を解析した結果,標的酵素のキノロン耐性決定領域のアミノ酸にキノロン耐性に関与する置換を1カ所獲得したこと,あるいはキノロン排出ポンプが発現亢進されたことが要因であることが示唆された。以上の成績から,LVFX 500 mg q.d.投与は,耐性化抑制の観点から100 mg t.i.d., 250 mg q.d.および250 mg b.i.d.と比較して,より効果的な用法・用量であることが示唆された。
Key word
levofloxacin, in vitro, simulation, Streptococcus pneumoniae, Escherichia coli
別刷請求先
*東京都江戸川区北葛西1-16-13
受付日
平成20年10月29日
受理日
平成20年12月2日
日化療会誌 57 (1): 1-14, 2009