Vol.57 No.1 January 2009
短報
下気道由来検体から分離されたβ-lactamase non-producing ampicillin resistant Haemophilus influenzae(BLNAR)の分離頻度と薬剤感受性
1)長崎大学医学部・歯学部附属病院第二内科*
2)同 検査部
3)長崎大学医学部保健学科
要旨
2000年から2006年までに当院で喀痰など下気道呼吸器検体より分離されたβ-lactamase non-producing ampicillin(AMP)-resistant Haemophilus influenzae(BLNAR)のretrospectiveな検討を行った。また保存された下気道呼吸器検体由来BLNAR 43株を対象に薬剤感受性試験を行い,有効抗菌薬の検討を行った。β-ラクタム系抗菌薬耐性の判定はCLSI(Clinical Laboratory and Standards Institute)のAMP耐性基準を参考に感受性菌(AMP MIC≦1 μg/mL),中間耐性菌(AMP MIC=2 μg/mL),耐性菌(AMP MIC≧4 μg/mL)に分類した1。β-ラクタマーゼ産生株は減少傾向を示していたが,BLNARは徐々に増加傾向を示し,2006年度には中間耐性株と耐性株を合わせると50%超に達していた。薬剤感受性試験ではペニシリン系抗菌薬,セフェム系抗菌薬ではpiperacillin(PIPC),ceftazidime(CAZ),ceftriaxone(CTRX)は良好な感受性を有していたが,cefotiam(CTM),cefotaxime(CTM),cefepime(CFPM)の感受性は低下していた。またカルバぺネム系抗菌薬ではmeropenem(MEPM)とdoripenem(DRPM)は良好な感受性を有していたがimipenem(IPM),biapenem(BIPM)の感受性は低下していた。マクロライド系抗菌薬ではazithromycin(AZM)が最も優れていた。フルオロキノロン系抗菌薬(levofloxacin;LVFX,gatifloxacin;GFLX,moxifloxacin;MFLX)はすべて良好な感受性を有していたが,1株のみLVFX感受性が1 μg/mLと低下した株を認めた。小児科領域だけでなく呼吸器内科領域でもBLNARは急速に増加しており,今後,市中肺炎や慢性気道感染症などの治療に難渋する症例が増えることが懸念される。また同系統抗菌薬間でもBLNARに対する抗菌活性に差を認めることから,H. influenzae感染症治療の際には抗菌薬選択に注意が必要である。
Key word
adult community acquired pneumonia, Haemophilus influenzae, β-lactamase non-producing ampicillin resistant Haemophilus influenzae, drug resistance
別刷請求先
*長崎県長崎市坂本1-7-1
受付日
平成20年7月14日
受理日
平成20年10月21日
日化療会誌 57 (1): 32-36, 2009