Vol.57 No.2 March 2009
原著・基礎
臨床分離されたPseudomonas aeruginosaに対するarbekacinの抗菌力(2003年~2007年)
1)東北大学加齢医学研究所抗感染症薬開発研究部門*
2)東北大学大学院医学系研究科内科病態学講座呼吸器病態学分野
3)群馬大学医学部附属病院感染制御部
要旨
臨床分離緑膿菌に対するアミノグリコシド系抗菌薬でアミカシン(AMK)と類似構造を有する抗methicillin-resistant Staphylococcus aureus(MRSA)薬のアルベカシン(ABK)の抗菌力を調査した。
使用菌株は,2003年~2007年に東北地方の一般市中病院20施設より臨床分離された緑膿菌1,348株(03年188株,04年317株,05年272株,06年292株,07年279株)とし,対象の薬剤は,ABK,AMK,ゲンタマイシン(GM)の3薬剤である。薬剤感受性の測定は微量液体希釈法にて行い,SMAディスク法およびPCRにてメタロ-β-ラクタマーゼ(MBL)の検討を併せて実施した。各薬剤の03~07年のMIC50はABKとGMが2~4 μg/mLでありAMK は各年ともに4 μg/mLを示した。一方のMIC90も同様にABKおよびGMは8~16 μg/mLを示しAMKの8~32 μg/mLよりいずれも1管程度優れていた。MBL産生株は64株およびMBL非産生MDRP株は18株分離され,そのMIC50とMIC90は,MBL非産生MDRPでは3剤間でほぼ同等であったが,MBL産生株ではABKとGMがAMKより優れていた。今回の検討から,ABKのMBL産生株を含む緑膿菌に対する抗菌力はGMとほぼ同等であり,AMKより1~2管程度優れていることがわかった。院内肺炎や創部感染症の起因菌として緑膿菌やMRSAは高率に分離され,またこれらによる混合感染もみられることから,抗MRSA薬のABKは,こうした感染の治療薬として,その有用性が期待される。
Key word
Pseudomonas aeruginosa, arbekacin, drug resistance, multiple drug resistant Pseudomonas aeruginosa(MDRP)
別刷請求先
*宮城県仙台市青葉区星陵町4-1
受付日
平成20年9月2日
受理日
平成21年1月9日
日化療会誌 57 (2): 91-96, 2009