ページの先頭です
ホーム > バックナンバー > 目次 > 書誌情報
言語を選択(Language)
日本語(Japanese)English

書誌情報

Vol.57 No.3 May 2009

原著・基礎

Streptococcus pneumoniaeのclarithromycin接触による耐性化の検討

雑賀 威1), 松崎 薫1), 長谷川 美幸1), 金山 明子1), 池田 文昭1), 小林 寅てつ2), 辻 明良2), 山中 昇3)

1)三菱化学メディエンス化学療法研究室
2)東邦大学医学部看護学科感染制御学
3)和歌山県立医科大学医学部耳鼻咽喉科

要旨

 Streptococcus pneumoniaeのマクロライド系抗菌薬耐性化に関する基礎的な検討を行うため,clarithromycin(CAM)感性8株(MIC:0.03~0.12 μg/mL,mefAermB遺伝子保有株各1株,非保有株6株)を用い,本抗菌薬との接触による感受性の変化および遺伝子学的解析を行った。
 1/32~1/2 MICの各sub-MICのCAMを含有する5%ウマ血液添加Mueller Hinton agar(MHA)に試験菌株8株を塗抹し,10代継代培養した。また,MIC以上の高濃度のCAMを含有する5%ウマ血液添加MHAに同試験菌株を塗抹し,段階的に高い濃度のCAMを含む培地で15代継代培養し,さらにCAM不含有培地で10代継代培養した。継代培養後の菌株に対するCAMのMICを微量液体希釈法で測定し,耐性遺伝子mefAおよびermBの有無を調べるとともに,23S rRNA遺伝子変異,L4およびL22タンパク遺伝子変異を検索した。
 mefAおよびermB遺伝子保有株は,sub-MICでの接触によりCAMのMICは4~64倍高値化した。MIC以上の高濃度のCAMに連続接触させた株に対するMICは8株中6株が≧64 μg/mLとなり,そのうち1株はermB保有株,4株は23S rRNA domain Vに変異を認めた。しかし,残り1株は今回検討したいずれの遺伝子にも変異は認められなかった。高濃度のCAMとの連続接触後,CAM不含有培地で継代培養した8株のうち,ermB遺伝子を保有する1株においてCAMのMICが>64 μg/mLから8 μg/mLと1/16以下の低値となった。mefAあるいはermBを有する菌株は,低濃度でのCAMの曝露により抗菌薬排出機能の発現や修飾酵素産生が亢進され,MICが高値化することが示唆された。
 今回の検討結果より,耐性遺伝子保有株のなかに表現型では感性と判定される臨床分離株が存在し,不十分な抗菌治療によりマクロライド系抗菌薬に抵抗性を示すようになる可能性が示唆された。S. pneumoniae感染症治療にマクロライド系抗菌薬を使用する場合は,分離菌のmefAermBなどの耐性遺伝子の有無を調べる必要があると考えられた。

Key word

Streptococcus pneumoniae, clarithromycin, mefA, ermB, point mutation

別刷請求先

東京都板橋区志村3-30-1

受付日

平成20年8月12日

受理日

平成21年3月10日

日化療会誌 57 (3): 203-207, 2009