ページの先頭です
ホーム > バックナンバー > 目次 > 書誌情報
言語を選択(Language)
日本語(Japanese)English

書誌情報

Vol.57 No.3 May 2009

原著・臨床

市中および院内感染症に対するtazobactam/piperacillinの持続静注の検討

齊藤 繁紀1, 2), 森下 剛久2, 4), 水野 紘樹2, 4), 野澤 健二3)

1)名古屋大学医学系研究科病態内科学講座血液・腫瘍内科
2)愛知県厚生農業協同組合連合会昭和病院血液化学療法科
3)富山化学工業株式会社開発企画部解析グループ
4)愛知県厚生農業協同組合連合会江南厚生病院血液・腫瘍内科

要旨

 【目的】tazobactam/piperacillin(TAZ/PIPC)持続静注の有用性を検証するため,TAZ/PIPC持続静注に対する臨床試験を行い,血中PIPC濃度を測定し,母集団薬物動態解析を行った。
 【方法】2005年10月から1年間に細菌感染症にて入院した患者を対象に,TAZ/PIPC(1:4製剤,5.0 g)24時間持続静注を施行し,有効性の評価を行った。同意が得られたものについて,投与翌日と投与後3~5日後に2ポイントの血中濃度を測定した。母集団薬物動態はNonlinear Mixed Effects Model(NONMEM)を用いて解析した。
 【結果】患者数47例(肝・胆道感染症19例,呼吸器感染症14例,尿路感染症11例,その他3例)。平均年齢74.4歳(中央値78,範囲17~99)。臨床効果は著効39例,有効2例,無効3例,判定不能3例で,有効率は93.2%(41/44)であった。持続静注を行った患者(14例,27ポイント)と既発表の単回30分点滴が行われた健常人(13例,80ポイント)で合計107の採血データを用いて薬物動態を解析した。解析モデル構造は2-コンパートメントモデルが適しており,得られた母集団平均パラメータはCL(L/h)=17.0×[Ccr(mL/min)/70]0.499,V1(L)=11.7,Q(L/h)=3.25,V2(L)=4.55であった。このPKパラメータより計算した定常状態のPIPC濃度は平均9.69 μg/mLであった。
 【結論】得られた定常状態のPIPC濃度は,尿路感染症,胆道感染症,呼吸器感染症の多くの菌をカバーできる値であり,臨床的な高い有効性を裏付けるものと考えられた。TAZ/PIPC持続静注法は簡便であり,高い有用性が期待できる治療法である。

Key word

piperacillin, tazobactam, continuous infusion, population pharmacokinetics

別刷請求先

愛知県名古屋市昭和区鶴舞町65

受付日

平成20年4月30日

受理日

平成21年2月12日

日化療会誌 57 (3): 208-218, 2009