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書誌情報

Vol.57 No.3 May 2009

原著・臨床

人工呼吸器関連肺炎に対する注射用ciprofloxacinの臨床効果

當山 真人1), 健山 正男2), 新里 敬3), 原永 修作2), 比嘉 太2), 伊志嶺 朝彦3), 普天間 光彦4), 藤田 次郎2), 斎藤 厚5)

1)与那原中央病院内科
2)琉球大学医学研究科感染病態制御学講座分子病態感染症学分野(第一内科)
3)中頭病院感染症科, 呼吸器内科
4)ハートライフ病院呼吸器内科
5)日本赤十字社長崎原爆諫早病院

要旨

 背景:2000年11月より注射用フルオロキノロン系抗菌薬(ciprofloxacin,以下CPFX)が本邦でも臨床使用が可能となり,その薬剤特性(呼吸組織への移行性が良好であり,幅広い抗菌活性をもつ)や欧米における使用実績から難治性呼吸器感染症に対する有用性が期待されている。一方,本邦では人工呼吸器関連肺炎(ventilator-associated pneumonia:VAP)における注射用フルオロキノロン系抗菌薬の有効に関する十分な検討はなされていない。
 目的:VAPに対する注射用CPFXの臨床的有用性について評価する。
 対象と方法:VAP発症患者に対して注射用CPFX 300 mg,1日2回点滴静注し,その有効性,安全性,細菌学的効果,治療期間を検討した。
 結果:試験期間中に11例が登録され,エントリー基準を満たした11例を安全性評価対象,9例を有効性評価対象とした。VAPの初発例では4例中4例,再燃例では5例中1例に有効性が認められ,有効率は55.6%(5/9例)であった。細菌学的効果は,消失3例,減少3例,不変3例であった。なお,原因菌として9例中8例でPseudomonas aeruginosaが推定された。注射用CPFXによる治療前に他の抗菌薬の投与を受けていた6例中3例が有効であった。また,注射用CPFXとの因果関係が否定できない有害事象は軽度の肝機能異常と貧血の悪化の2件のみであり,重篤なものは認められなかった。
 考察:VAPの治療において注射用CPFXは高い有効性を示した。特に,初発例では顕著であり,再燃例や他薬剤無効例においても有効例を認めた。この結果から,注射用CPFXは,VAPのエンピリック治療の薬剤選択で重要な薬剤の一つになると考えられた。

Key word

ventilator-associated pneumonia, ciprofloxacin, nosocomial infection

別刷請求先

沖縄県島尻郡与那原町字与那原2905

受付日

平成20年11月13日

受理日

平成21年3月13日

日化療会誌 57 (3): 219-225, 2009