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書誌情報

Vol.57 No.4 July 2009

総説

新規経口カルバペネム系抗菌薬「テビペネム ピボキシル」(オラペネム®小児用細粒10%)の薬理学的特性と臨床成績

砂川 慶介

北里大学大学院感染制御科学府感染症学研究室

要旨

 テビペネム ピボキシル(TBPM-PI,オラペネム®小児用細粒10%)は,2009年4月22日に製造販売承認を取得した新規経口カルバペネム系抗菌薬である。TBPM-PIの活性本体であるテビペネム(TBPM)は,幅広い抗菌スペクトルと強い抗菌力を有し,とりわけ,ペニシリン耐性のStreptococcus pneumoniaeHaemophilus influenzaeに対して強い抗菌力を有する。また,マウス大腿感染モデルを用いたpharmacokinetics-pharmacodynamics(PK-PD)試験の結果,β-ラクタム系抗菌薬が相関するT>MICよりも,AUCf/MICに高い相関を示した。
 TBPM-PIの臨床開発にはPK-PD理論を活用した。すなわち,用法・用量をPK-PD理論を活用して設定し,有効性評価とPK-PD解析によりその設定の妥当性を確認して進めた。マウスPK-PD試験で得られたAUCf/MIC値から成人用法・用量を設定して用法・用量検討試験を実施し,成人での臨床推奨用法・用量を得た。続いて,成人からの体重換算とPK-PD解析により小児の用法・用量を設定した。小児の臨床推奨用法・用量とした4 mg(力価)/kg×2回/日投与で高い臨床効果が得られ,高用量の6 mg(力価)/kg×2回/日投与で治療に難渋する症例に対しても高い臨床効果が得られた。さらに,小児急性中耳炎を対象としたCDTR-PI高用量との二重盲検比較試験で,CDTR-PI高用量との非劣性が検証されるとともに,早期の細菌学的効果が高いことが示された。また,安全性プロファイルは,既存のβ-ラクタム系抗菌薬と異なるものではなく,臨床上問題となる副作用は認められなかった。
 TBPM-PIは,薬剤耐性菌による小児感染症の治療にその活躍が強く期待される。しかし,初の経口カルバペネム系抗菌薬であるため,耐性菌出現防止の観点から安易な処方は避けるべきと考え,適応疾患は,薬剤耐性菌で治療に難渋している小児中耳炎,副鼻腔炎,肺炎の3疾患に絞った。さらに,標準治療抗菌薬では効果が期待できない症例に限定して使用することが重要であると考えられる。

Key word

tebipenem pivoxil, child, oral carbapenem, PK-PD

別刷請求先

東京都港区白金5-9-1

受付日

平成21年5月25日

受理日

平成21年6月18日

日化療会誌 57 (4): 279-294, 2009