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書誌情報

Vol.57 No.4 July 2009

症例報告

静注用アーテスネートが著効した重症熱帯熱マラリア・四日熱マラリアの重複感染

中島 由紀子1), 菅沼 加奈子2), 坂本 光男1), 大曽根 康夫2), 秋月 哲史2)

1)川崎市立川崎病院感染症科
2)同 内科

要旨

 症例は37歳の中国人男性。パプアニューギニア(PNG)から中国への帰国途中の船上で38℃台の発熱が出現,持続するため川崎港に緊急寄航し,当院救急外来を受診した。来院時の末梢血薄層塗抹標本より熱帯熱マラリアと診断した。感染赤血球率は15.2%であったため,重症熱帯熱マラリアの診断基準に合致していたが,まず即座に入手可能なメフロキンにて治療を開始した。しかし12時間後に寄生率,原虫の形状に変化なく,症状出現後4日を経過していたため緊急の治療が必要との判断で国立国際医療センター研究所よりアーテスネート静注薬の供与を受けた。6時間で感染赤血球率は15%から2%と減少し,翌日の検査ではマラリア原虫の消失を確定した。それに伴い臨床症状や検査所見も改善した。原虫消失時間は28時間,発熱消失時間は48時間であった。その後,TaqMan real-time PCR systemで本症例が熱帯熱マラリアと四日熱マラリアの重複感染であることが判明した。アーテスネート静注薬は安全性が高く,他の剤形より即効性があることが知られており,今後本邦での使用が可能になることが望まれる。

Key word

artesunate, falciparum malaria

別刷請求先

神奈川県川崎市川崎区新川通り12-1

受付日

平成21年1月29日

受理日

平成21年5月25日

日化療会誌 57 (4): 311-315, 2009