ページの先頭です
ホーム > バックナンバー > 目次 > 書誌情報
言語を選択(Language)
日本語(Japanese)English

書誌情報

Vol.57 No.S-2 July 2009

原著・臨床

Levofloxacin 500 mg経口投与時の母集団薬物動態/薬力学解析

谷川原 祐介1), 清水 貴子2), 戸塚 恭一3)

1)慶應義塾大学医学部薬剤部
2)第一三共株式会社研究開発本部
3)東京女子医科大学感染対策部感染症科

要旨

 日本国内におけるlevofloxacin(LVFX)の標準用量を100 mg 1日3回投与から500 mg 1日1回投与へ変更するにあたり,新たな用法・用量の妥当性をpharmacokinetics-pharmacodynamics(PK-PD)の観点より検討した。LVFX 500 mgを日本人健康成人,腎機能低下患者および呼吸器感染症患者に1日1回経口投与した時の血漿中薬物濃度を用い,母集団薬物動態解析を行った。解析には,呼吸器感染症患者151例,健康成人27例および腎機能低下患者22例より得られた血漿中薬物濃度1,362点を用いた。薬物動態モデルとして1次吸収過程を伴う2-コンパートメントモデルを用い,非線形混合効果モデル(Nonlinear mixed effects model,NONMEM)により母集団薬物動態パラメータを推定した。薬物動態パラメータに影響を及ぼす因子を検討した結果,経口クリアランスに対するクレアチニンクリアランス,中心コンパートメントの分布容積に対する体重と年齢,1次吸収速度定数に対する食事の影響が認められた。得られた最終モデルの母集団薬物動態パラメータおよびStreptococcus pneumoniae臨床分離株のMIC分布を用い,モンテカルロシミュレーションにより呼吸器感染症患者集団のPK-PDパラメータを算出した結果,S. pneumoniae感染症における耐性化抑制のターゲット値とされるCmax/MIC≧5に到達する患者の割合はLVFX 100 mgの1日3回投与では31.4%であったのに対し,500 mgの1日1回投与では93.5%と大幅に向上した。一方,同感染症における有効性のターゲット値とされるAUC0-24h/MIC≧30に到達する患者の割合は,いずれの用法・用量においても95%以上であった。以上より,LVFXの500 mg 1日1回投与法は,現行の用法・用量と比較して同等以上の有効性が期待できるとともに,耐性化抑制の点ではより適切であることがPK-PDの観点から明らかとなった。

Key word

levofloxacin, population pharmacokinetics, PK-PD

別刷請求先

東京都新宿区信濃町35

受付日

平成20年12月15日

受理日

平成21年3月23日

日化療会誌 57 (S-2): 47-54, 2009