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書誌情報

Vol.57 No.5 September 2009

原著・臨床

市中肺炎に対するスイッチ治療の有用性

柳原 克紀1, 2), 森永 芳智1, 2), 山田 康一1, 2), 中村 茂樹1), 栗原 慎太郎1), 山本 和子1), 今村 圭文1), 泉川 公一1), 関 雅文1), 掛屋 弘1), 山本 善裕1), 上平 憲2), 河野 茂1)

1)長崎大学病院第二内科
2)同 検査部

要旨

 医療費の高騰により,市中肺炎に対しても医療経済を考慮した治療が求められるようになった。欧米では症状改善に伴い,早期に注射用抗菌薬から経口抗菌薬への切り替え(スイッチ療法)が行われ,入院期間の短縮や医療費の削減に有用と報告されている。今回われわれは,わが国における市中肺炎患者に対するスイッチ療法の適応基準およびスイッチ療法の臨床的意義を明らかにするために,多施設共同研究を実施した。
 2004年1月から2005年5月の間に当院および関連施設を受診した患者のうち,入院して注射用抗菌薬による治療が必要な市中肺炎患者で,FineらのPneumonia Patient Outcomes Research Team(PORT)cohort study scoreによるrisk class分類のIIからIVに該当する患者103症例を対象とした。初期治療として,注射用抗菌薬(経口薬の併用も可)の投与を行い,治療開始3日後の時点で評価を行い,「咳嗽および呼吸困難など呼吸器症状の改善」「CRP 15 mg/dL未満」「経口摂取機能の十分な改善」「12時間以上にわたって体温が38℃以下に保たれていること」のすべての項目を満たした患者69例をスイッチ群ならびに非スイッチ群の2群にランダムに割り付け,臨床的検討を行った。臨床効果は,スイッチ群100%,非スイッチ群96.8%であり,両群間に差は認められなかった。スイッチ群,非スイッチ群の2群間において,臨床効果,胸部X線所見の改善度,微生物学的効果において,統計学的な差が認められなかった。肺炎の再発は,両群に1例ずつ認められた。
 以上より,軽症から中等症の市中肺炎入院患者において,経口薬への切り替え基準を満たせば,早期に経口薬治療へと移行することが可能であることが示唆された。

Key word

community-acquired pneumonia, switch therapy, cost effectiveness, CRP

別刷請求先

長崎県長崎市坂本1-7-1

受付日

平成21年4月24日

受理日

平成21年7月26日

日化療会誌 57 (5): 423-429, 2009