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書誌情報

Vol.58 No.S-1 March 2010

原著・臨床

市中肺炎患者を対象としたtazobactam/piperacillin(配合比1:8製剤)の臨床薬理試験

渡辺 彰1), 青木 信樹2), 二木 芳人3), 斎藤 厚4), 河野 茂5), 柴 孝也6)

1)東北大学加齢医学研究所抗感染症薬開発研究部門
2)新潟市社会事業協会信楽園病院内科
3)昭和大学医学部臨床感染症学講座
4)日本赤十字社長崎原爆諫早病院
5)長崎大学大学院医歯薬学総合研究科感染免疫学講座先進感染制御学分野(第二内科)
6)東京慈恵会医科大学

要旨

 注射用のβ-ラクタマーゼ阻害剤配合ペニシリン製剤であるtazobactam/piperacillin(TAZ/PIPC,配合比1:8製剤)の4.5 g 1日3回点滴静注による市中肺炎患者を対象にした臨床薬理試験を実施し,PPK(Population Pharmacokinetics;母集団薬物動態)解析により,本薬の日本人肺炎患者における体内動態を明らかにするとともに,Pharmacokitetics-pharmacodynamics(PK-PD)解析,有効性および安全性の観点から,市中肺炎患者における用法・用量の妥当性を検証した。
 1.PPK解析:肺炎患者におけるPIPCおよびTAZのPKパラメータは,健康成人と比べて全身クリアランス(CL)が低く,半減期(t1/2)が長かった。また,分布容積(V)がおのおの1.23倍および1.30倍大きく,最高血中濃度(Cmax)は低かった。
 2.臨床効果:投与3日後の有効率は11.6%(5/43例),投与終了時又は中止時の有効率は86.0%(37/43例),投与終了7日後の改善率は81.4%(35/43例)であった。
 3.PK-PD解析:Streptococcus pneumoniaeHaemophilus influenzaeおよびMoraxella(Branhamella)catarrhalisが検出された24例における細菌学的効果は全例「消失」であった。Time above MIC(%)は,全例50%以上であった。Ccr値が120 mL/minの肺炎患者にTAZ/PIPCを1回4.5 g 1日3回および4回投与した場合の%Time above MICが30%を超えるMIC値は32 μg/mLおよび64 μg/mLであった。
 4.安全性:副作用は24例54件発現し,発現率は40.0%であった。臨床検査値異常変動のうち副作用とされた事象は16例32件発現し,発現率は26.7%であった。
 以上のことから,市中肺炎治療におけるTAZ/PIPC(配合比1:8製剤)の用法・用量は,PK-PDおよび安全性の観点から,1回4.5 g 1日3回以上の投与が妥当であると考えられた。

Key word

tazobactam/piperacillin, community acquired pneumonia, population pharmacokinetics, PK-PD, clinical trial

別刷請求先

宮城県仙台市青葉区星陵町4-1

受付日

平成21年6月10日

受理日

平成21年12月8日

日化療会誌 58 (S-1): 11-28, 2010