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書誌情報

Vol.58 No.3 May 2010

原著・臨床

Coagulase negative Staphylococcus(CNS)によるcatheter-related bloodstream infection(CR-BSI)におけるvancomycinの有効性・安全性

望月 敬浩1), 佐藤 智明2), 冲中 敬二2), 岸田 直樹2), 藤田 崇宏2), 上田 晃弘2), 具 芳明2), 大曲 貴夫2)

1)静岡県立静岡がんセンター薬剤部
2)同 感染症内科

要旨

 国外のガイドラインでは,coagulase negative Staphylococcus(CNS)によるcatheter-related bloodstream infection(CR-BSI)の治療にはvancomycin(VCM)が推奨されている。合併症がなく,カテーテルが抜去されている場合5~7日間の短期投与が推奨されているが,日本国内ではCNSはVCMの適応菌種でないだけでなく,CNSによるCR-BSIにVCMを用いた場合の有効性・安全性・TDMの必要性の検討は十分になされていない。そこで,CNSによるCR-BSIに対してVCMが短期投与された患者20人を対象にVCMの有効性・安全性およびTDMの必要性について後ろ向きに検討した。治療の有効率は85%(17/20),有害事象発現頻度は,腎障害:5%(1/20),レッドマン症候群:5%(1/20)であった。聴覚器障害と思われる自覚症状がみられた患者は存在しなかった。また,TDM実施群(12人)およびTDM非実施群(8人)における有効性・安全性の差異についても検討した。有効率はTDM実施群:83%(10/12),TDM非実施群:88%(7/8)(p=1.00)であった。腎障害発現頻度はTDM実施群:8%(1/12),TDM非実施群:0%(0/8)(p=1.00),レッドマン症候群発現頻度はTDM実施群:8%(1/12),TDM非実施群:0%(0/8)(p=1.00)であり有効性・安全性に差は認められなかった。以上より,VCMでCNSによるCR-BSIを安全に治療できる可能性が示唆された。また,CNSによるCR-BSIに対して5~7日間程度の短期の投与であれば,VCMのTDMを省略できる可能性が示唆された。

Key word

coagulase negative Staphylococcus(CNS), catheter-related bloodstream infection(CR-BSI), vancomycin, therapeutic drug monitoring(TDM)

別刷請求先

静岡県駿東郡長泉町下長窪1007

受付日

平成21年11月7日

受理日

平成22年4月5日

日化療会誌 58 (3): 233-238, 2010